working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

赤ずきんちゃんはいくつなのか

ごぶさたしています。今に始まったことではありませんが。

 

掃除機のフィルターパックがなくなりそうで地味に困ってるgentlyです。買いに行こうにも近所の電器屋さんは閉まってるし、ヨドバシ梅田は19時に閉まるし(在宅勤務という不毛な状態をぶっちぎれば余裕で間に合う)密林その他通販は銀イオンとか高いやつばっかり勧めてくるし型式適合するかよう分からんし、しょうもないことでストレスが溜まりやすくなってます。

 

こんな時はアナログゲームですよ。時節柄人が集まりにくいけど、プレイした記憶が心のトゲトゲを溶かしてくれます。デジタルはいかん。特に長時間連続はいかん。人間性が歪む。1日1時間の条例出した香川県の見識は間違ってるとは思わん。ただ決め方に問題がある。

 

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俯瞰では分かりませんが本のようなデザインです

赤ずきんは眠らない」を入手したのは何年くらい前だったか忘れました。なぜ忘れたか。東京の中心で過労を叫ぶ弁護士の友人からもらって未開封のままほったらかしてたからです。今年に入って私の中でにわかに高まってきたアナログゲーム熱に突き動かされるように遊んでみたら結構楽しかったので、くれた当人にお礼を言ったら「あげてない」と言うんです。そんなはずあるかぁそんなはず……と思って諸方面にメール確認したら、くれたのはアニメのついでに在宅勤務を謳歌している師匠(みんな大学の同級生ね)でした。

 

すでに各所で書き尽くされたゲームルールの説明をいかに面白おかしくできるか。一口に心理戦と言っても互いに何を読み合うのか明確に記述しているものを見たことがありません。この両方を満たせるよう頑張ってみましょう。

 

まずはゲーム着想のきっかけになっているのであろう「赤ずきん」について簡単に見ておきましょう。「赤ずきん」はグリム童話にも収録されている外国のおとぎ話ですね。おとぎ話を読んだことのない人はこんなブログを読むわけがないと思いますが、洋の東西でプロトタイプ赤ずきんから派生した数々の亜種赤ずきん(あなぶきんちゃんは除く)が存在するらしく、それぞれの起源を議論しているといつまで経っても本題に入れないので、知識の平準化を目的に私の知っているあらすじを述べます。

 

・登場人物は赤ずきん、おおかみ、おばあさん、猟師のおじさん。

・老衰で伏せりがちなおばあさんは電気も水道もない森の奥の一軒家で暮らしている。

・町娘の赤ずきんは一人でおばあさんのお見舞いに行く。

 この時点で複雑な家庭事情が垣間見える。

・森に住むおおかみは肉食べたいと日々願っているところに赤ずきんが現れる。

赤ずきんはすれてない町娘なので来訪目的をおおかみに告げてしまう。

・親切面したおおかみは誤った道を案内する。家に先回りしておばあさんをペロリ。

・その後おおかみはおばあさんの衣服をまとって赤ずきん待ち伏せ

 つまり老女を裸にして食ったと。

・おばあさんの様子が変だと思いながらも赤ずきんが近づいたところでまたペロリ。

・本懐遂げてぐーぐー眠るおおかみを、通りかかった猟師のおじさんが発見する。

・猟師のおじさん、おおかみの腹を裂いて少女と老女を救出。

・初めてを奪われ復讐に燃える赤ずきんはおおかみの腹に石を詰め込んで縫合する。

・目覚めたおおかみは満腹感に包まれて家を出るが、異常な喉の渇きに気づく。

 もっと他に気づくべきことがあるだろう。

・外の瓶から水を飲もうと体を傾けたところ、瓶の中に転落。

赤ずきん、すかさず蓋をしておおかみが溺死するのを待つ。めでたしめでたし。

 

……たぶんこれはスタンダードな話ではないな。こうして追ってみると森林の小屋に弱った老人を捨て置く介護問題、無知な美少女を単独で死地に追いやる育児放棄、なんでも食べちゃう男はいずれ死ぬぞ的な性的倫理への問いかけなど、社会問題がいっぱいです。おとぎ話とはそういうものです。

 

ゲームはこのお話における「おおかみ=捕食する」、「赤ずきん=身を守る」(お話では全然守れてないけど)というモチーフをとって、赤ずきんの寝込みを襲撃できればおおかみの勝ち、トラップが仕掛けられていれば赤ずきんの勝ち、という極めて単純なルールに支配されています。

 

しかしここで考えてみましょう。おおかみが常に赤ずきんを襲うのならば、赤ずきんは常にトラップを仕掛けて待っていればいいわけで、読み合いが発生しません。なのでおおかみには捕食対象の候補として、「おやぶた」と「こぶた」という選択肢が与えられています。3人でプレイする場合は上記の二項対立に「おやぶた」が加わり、以降プレイヤーが増えるごとに「こぶた」が1匹ずつ増え、6人まで遊べます。

 

……私の知っている赤ずきんのお話にぶたは出てきません。おおかみがぶたを捕食しようとする物語で思い出されるのは「3匹のこぶた」でしょうか。あれも襲われるけど最終的にレンガの家に逃げ込んだんじゃなかったっけ。おやぶたは記憶の片隅にもいないけど、こぶたよりおいしそう=配点を高くする存在としてのおやぶたなんでしょうね。

 

ゲームの目的はごく単純で、1ゲームごとに配役を変えながらプレイし、最終的に10点獲得したプレイヤーが勝利します。赤ずきんには3点、おやぶたには2点、こぶたには1点が配点されており、攻撃側プレイヤーの「腹ぺこ狼」はそれぞれがすでに眠っているのか、トラップを仕掛けて待っているのかをプレイヤーとの対話を通じて推測し(後述します)、誰を襲撃するか指名します。

 

当然3点の赤ずきんを狙いにいきたいところですが、トラップで防御される可能性が高く、おやぶたの2点、こぶたの1点にもトラップ防御の可能性があるため、手堅く行くか大きく狙うかのジレンマが発生します。そしておおかみは襲撃に失敗すると、襲撃先の配点分の持ち点を失います。ちなみに私がおおかみの時はだいたい全員トラップです。襲わないという選択肢もあっていいんじゃないかと思いましたがおおかみは腹ぺこなので本能欲に突き動かされる状態なのでした。そうでした。

 

いっぽうの防御側プレイヤーは以下の条件により判断が分かれます。おおかみに襲われずに眠ってやり過ごすか、襲われてもトラップを仕掛けておくかで配役の得点がもらえますが、トラップを仕掛けてもおおかみが襲ってこなければ得点することができません。なのでトラップを仕掛けた場合は積極的に襲撃されるよう誘導し、安眠している場合は襲撃されないようおおかみのプレイヤーの意識を逸らす必要があります。

 

私と一緒に遊んでくれるプレイヤーたちは原理の世界ではなく演技の世界にいるので、心理戦が絡むタイプのゲームが始まると非常に長くなります。赤ずきんは本当は25才で少女役に限界を感じているとか、こぶたがネトゲーマーで5連徹とか、おやぶたは韓流ドラマにハマってるとか、おおかみ以上に攻撃的な妄言虚説が飛び交う中で正しい判断を下せるのかどうか。アナログゲームは勝敗そのものより過程を楽しむものなのかも知れません。

 

……あと、まったくの余談ですがゲームイラストは友人のSNS画像の似顔絵も描いている152°さんです。日々の生活に疲れ果てたような赤ずきんの目が気に入ってます。断章のグリムみたいなおとぎ話解説は必要なかったな。