working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

アニメと私(2.5)

アニメに傾倒し始めたころ、地平と時空を共有する同じ世界の女性たちへの興味関心の代理としてアニメを選んでいるのではないか、リアルの女性に相手されないからアニメを代わりにしているだけで、いつか女性と関係を持つことが出来たらアニメ趣味なんて捨てちゃうんじゃないか、その程度のことに金と時間をかける意味なんてあるんだろうか?と悩んだことがあります。男性諸氏なら誰もが考えること、だ、と私は思っていますが違うのかな。

 

結果から申し上げますと、私がアニメにうつつを抜かし始めた2006年からの15年間に、3人の女性たちが代わる代わる私の前に立ち止まり、全員1年もたずに立ち去りました。この間私は変わらずアニメを見続けました。並行して、3人ともそれなりにイチャコラして、何ならアニメの話題を持ち出してもすんなりコミュニケーションが取れていたと思うのですが、彼女たちが去り際に残す言葉は

 

「gentlyさんって、誰のことも好きじゃないんですね」

 

私の思いとは裏腹に、彼女たちは私の言葉が足りないのか、気配りが足りないのか、お金が足りないのか、デートが足りないのか、デートに付随するセックスが足りないのか、それらをひっくるめて愛というならばそのほとんどを構成するのは間違いなくお金なのですが、一様に何らかの不足窮乏を訴え、それらの改善に私が動き出す前にいなくなってしまうのです。

 

あ、いや、私から願い下げた例外がいました。11も年の離れた、たまたま誕生日が同じで、もうちょっと痩せたら夏菜になれそうな、若くて可愛らしい顔立ちをした娘でした。どこで知り合ったと思います?京橋の飲み屋です。しかもバイトの子です。知り合ったとき彼女は18でした。……はんざい?付き合い始めたのはもっと後なので大丈夫です。ただ、酒癖が異常に悪く、あまり具体的に書くのは気が引けるのですが、例えば電話ならこんな感じ。

 

「ほんまに好きやったら今からタクシー乗って来いよ」
「明日仕事なんですけど」
「可愛い彼女が会いたいゆってるのにこーへんて、なんなん?」
「時計ご覧になりました?2時ですよ?夜中ですよ?」
「はぁ?時間で人と会うかどうか決めるんか」
「一般的にはそうだろうと思います」
「好きやったら時間もなんも関係ないやろがぁ」
「好きのために仕事すっぽかす奴が君は好きなんですか?」
「はぁ?意味わかりませんけどぉ」
「今何をいくら説明しても無駄な気がします」
「どうせ私のことなんかアホな女やと思ってるんやろ?」
「それを認めたら君は何か納得するのですか?」
「ほんまムカつくわ、てかはよ来いよ」
「だから行きませんと言ってるつもりなんですが」
「ふん、欲しいときだけ呼び出して、どうせカラダ目当てなんやろ?」
「はい、そうですが、何か問題が?」
「認めるんか!お前認めるんかよ!」
「体以外に認めてもらえると思う部分があるとお考えですか?」
「お前最低やな!しね!!しんだらええねん!!アホ!!」

 

気が引けるって、どこに引け目があったのか自分でも分からないくらい克明に覚えていて、それを余すことなく書き写しました。気持ちを確かめるように見えて人を弄ぶ行為を強要するのって、好きとかそういうレベルの話じゃなくね?会いたいだの愛をくださいだの、クソみたいなJPOPのノリで他人の社会的信用を破壊する気か?

……ひと悶着あった翌日早々、謝罪のLINEがやって来るんです。酔っぱらってひどいこと言いました。ごめんなさい。「いいえ、ひどいことを言っているのは私です」なんて返事するわけもなく、泥酔しているはずなのに「ひどいこと」を覚えている程度にワガママを言っても、謝れば許される悪しき前例がある限り、今後も不毛なやり取りが続くと考えましたので一方的に関係解消を宣言しました。

 

こうやって眺めると、他人が必要以上に時間侵略してくるのがたまらなく嫌なんですね。要するにセックスの時以外いなくていい。涼宮ハルヒさんがおっしゃっていた「恋愛は精神病の一種」みたいな意見には賛同しませんけど、大学生の頃まであったはずの、誰かを恋愛対象として好きになる感覚は、社会人の最初の2年間でたぶん死んだのでしょう。合コンにも行きましたし、漠然と結婚のことを考えてた時期もありました。

まさにそれを考えていた25か26の頃、ちょうどエヴァが私の中へ入ってきたのと重なる頃、

 

小中の同級生のだれそれ君は官公庁勤めててなぁ、あんな舞台にも興味持っていろいろやるってすごいやん?そんであんた何してんの?東京の学校行かせたらあんなアバズレみたいなけっばい女連れて喜んで帰ってきてほんま情けないわ、あんた行ってるのええ会社なんやろ?そんな人もおらへんの?あぁでけへんのか、そんでそやから次はなに、テレビのマンガの子好きになったんか?あんたが好きゆうたら答えてくれるんか?あんた以上にあんたのこと心配したってんのに御結構な御身分ですことやな、えぇ?お見合いでもさせたろか?

 

きっとおかんは、私の進路に何か大きな不満があって、あるいは帰省の都度仕事の愚痴を言う私が情けなくて、それを直接言えないからこういう言い方をするんだろうと思ってきましたが、最後に聞いたこれを上回る何かを言われたらおかんを殺して私も自殺してしまうと思ったので、これを境に会わなくなりました。数年前、連絡先を教えていないはずの妹から連絡があり、おかんの被害妄想がひどくなっていると聞きましたが、特に返事しませんでした。連絡先を教えた官公庁の同級生には家族くらいちゃんとしろとメール1本で罵られましたが、無視しました。

 

30を過ぎて独り身の私を心配する上司が気を利かせて、他社の独り身の女性を紹介してくれたこともありましたが、あの時は相手が私と同じ感覚の持ち主で本当に良かったと思いました。2人きりにさせられて、お互い別に何もないのに連れてこられたんでしょう?会社って何なんでしょうねって話をしました。最初の3人の中にこの人は含まれず、同時進行していたのはカラダ目当ての居酒屋のバイトの子であまりにも体裁が悪くて何も言えませんでした。

 

恋愛という回路が壊れた、あるいは存在しない人間は変なのでしょうか。つまり私の場合、リアルな女性関係とアニメの美少女には何の関係もなかったので、両者を併存させることが出来たにも関わらず、その片方である恋をしたい感覚、結婚にあこがれる感覚は本人が望むと望まざるとに関わらず失われたのです。我那覇響ちゃんが大好きです、沼倉愛美さんが大好きですといくら言ったところで、それは五感を通じて相手を確かに感じ取ることのできない距離感だからこそ言えること、つまり疑似恋愛であって、本当に響ちゃんが同じ地平で動き出したら私は見向きもしないと思うんです。沼倉さんは……押し倒すかもしれない。

 

いつだったか、既婚の会社の先輩が「ロケットブースターあるやろ?ブーストするやろ?切れるやろ?結婚はその間にあるねん」と分かったような分からないようなことを言ってました。恋愛から結婚の間には勢いしかなく、その勢いは結婚後徐々に失われ、今は激しく後悔しているからお前はやめとけ程度に解釈しましたが、結婚の向こう側に何があるのかは、いくら人の話を聞いたところで結婚した人にしか分かりません。子供のあるなしでもだいぶ意見が変わってくるでしょう。ただそれは私にとって、桃太郎が鬼ヶ島に行ったのと大差ない、物語レベルでしか知らない話なのです。

 

私には自分のために使える時間が山ほどありました。それを本格的にアニメに振り向け始めるのが2008年4月以降で、その途中に女性たちが現れては消えを繰り返してきたわけです。なんでこんな話をしたんでしょうね。後悔を伴わない寂寥感とともに歩むアニメの世界が私にはどう見えていたのかをちゃんと書きたいと思います。