working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

アニメと私(5)

※2023年7月に大幅に改稿しました。

 

皆様こんにちは。男子は生まれながらにして等しくスケベであり、どれだけ年を取っても埋火のようにちろちろ燃え続けています。そのスケベ心を理性によってコントロールできる男子は紳士と称され、できない男子は紳士と称されます。

このようにスケベとほぼ同義の男子たちは、高校生の頃が一番つらいと思います。うっかりスカートの内側とか見ちゃった日には罪悪感を凌駕する多幸感に包まれ、紳士になれそうなのに紳士になってしまうリスクをはらんだ微妙なお年頃です。

その大半が子供から大人へと人生の分岐点を迎え、恋愛にうつつを抜かしていると期待されるパフォーマンスを発揮することが出来ない、そういう時期なのです。

なので当時好きだった眼鏡っ娘とは手をつなぐだけで心臓がハイなビートを刻み、巡り巡った血流の行先はこっちこっちのコチンコチンコ!にも関わらず、押したり揉んだりこすったりのアクションボタンを押すことへの自制が働いてました。今はそんなものないです。自制は辞世に等しい。

 

観衆を見ればカボチャ畑と思え、男子を見れば全員送り狼と思え。やりたいと思ったらやりなさい。言いたいことはここまでなのであとは適当に読み飛ばしていただいても大丈夫です。

 

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全巻アニメイトで買ったのでポスター全部あるよ

2009年7月、化物語のテレビ放送は紳士を魅了するスカートの中の逆三角形から始まりました。ハルヒ2期、中でもエンドレスエイトの微妙な自己評価をどう処理したものか首をかしげながら7月に突入し、前評判の高かった本作がどんなお話なのか、アルファベットにすると山本山みたいな西尾維新(NISIOISIN)とは何者なのか、それなりに期待して入った第1話早々ずぶずぶになりました。

 

VOFANさんの淡い原作イラストに、ちょい太めの輪郭線で生命を吹き込んだ渡辺明夫さんの仕事だったり、止め絵の多用と場にそぐわない色使いといったシャフトのアイデア(アイデア?)だったり、おそらくシリーズディレクター尾石達也さんの趣味的な漢字へのこだわりだったり、西尾維新さんの妙に持って回ったものの言い方を違和感なく再現した声優陣の皆様だったりが一般的な評価ポイントとして挙げられます。

 

ただ、私が高く評価するのは、作品世界で展開している事態の異常さとは関係なく、普通の高校生男女が展開する恋愛のうまくいかなさが基底にあることです。

特に、正ヒロインの地位を射止めた戦場ヶ原ひたぎサディズムと猜疑心と大胆さは子供離れどころか人間離れしたものがあり、それでいて阿良々木暦に上手く告白できないメンタリティとの齟齬が大きすぎて、頭のどこかで「こんな女いるはずない」と思ういっぽう、ほんのり、見えるかどうかくらいの淡いレベルで応援したくもなるのです。

二人が後にどうなるかはここでは申しません。すでに「うまくいかなさ」って書いてる時点でそれが通るかどうかはともかく。

事態への対処は大人っぽくても、その本当のところではぎこちなく互いを思い合う、とでもいうんでしょうか。恋愛への清潔感と性愛的な行動への多少の嫌悪感、思い通りにいかない事態へのもどかしさ、年を取ると同じ軌道上にあるように見えるいくつかの感情がギンギンに軋み合っているのがすごく好きです。

 

美少女がたくさん出てくることを理由に、私の失われたキャッキャウフフで頭からっぽな数年間を単純回復するための物語になることを多少期待していたのに全くそうならなかったことは、いい意味で初めての体験でした。辛うじてそれに近いシーンがあったとすればBL本を水のように掬い上げてぶっかけ合う神原駿河の部屋掃除でしょうか。

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うちでトイレするとひたぎさんに見つめられます

それでも作品にのめり込んだのは、神谷浩史さんが口酸っぱくなるほど繰り返していた「アニメは総合芸術」、この言葉に表される総合点の高さです。

パーツごとに見ると気付けなかった、それらが合わさって完成する神がかった調和が生み出す未曽有の映像体験。業界関係者が言いそうな、今までに見たことも聞いたこともない新しさを持っていたのは間違いないと思います。

 

新しいと言えば、全編通じて収録されているオーディオコメンタリーです。

普通、コメンタリーは役を外した後の声優さんがお芝居のどこに力を入れたとか気を付けたとか後日談的に語る内容がほとんどでしたが、化物語のそれは役に入ったままの掛け合いになっています。沢城みゆきさんのがんばるするがちゃんがんばりすぎ。言うまでもないことだがほっちゃんは可愛いだけじゃない。

一般的なコメンタリーは「あとがたり」として特典CDに収録されています。一線級の声優さんがどんなことを思いながらお芝居していたのかはこちらで聞けます。モノを持つ意味はこういうところに出るんでしょう。

 

全体の印象をぐっと持ち上げたのは歌です。supercellの2代目ゲストボーカル・nagiさんが切なく歌い上げる君の知らない物語と、ウエダハジメさんの円空仏みたいなエンディング映像、あれは超カッコよかったし可愛かったし言うことなかったです。これをきっかけに私はやなぎなぎさんのファンになってしまったわけですし。

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ものを持つことの値打ちについて考えさせられる

ラブライブシリーズを見ていてもお分かりの通り、音楽は偉大であり、歌とアニメは切っても切り離せない関係にあります。斎藤千和さんはひたぎクラブ後もなぜかテレビで延々と流し続けられるstaple stableについて文句タラタラでしたけれど、私は好きですよ。満を持して登場するほっちゃんこと堀江由衣さんのsugar sweet nightmareと双璧を成すと言っても過言ではない。

 

じぇ「恋愛サーキュレーションはどうですか」
師匠「あれは歌じゃないね、ラップだよ」
じぇ「好きかどうか聞いたつもりなんですけど」
師匠「花澤さんに歌わせた奴は俺達以上の変態だ」
じぇ「可愛いじゃないですか、私は好きですよ」
師匠「ゼーガペイン通ってきた俺には何も言えない」

探したらちゃんとオフィシャルの動画ありました。民放のバラエティをほとんど見ないので最近の花澤さんの活躍をほとんど知りませんけど、普通に顔出しでテレビ出てはるんですね。さんま大先生と花澤香菜悠木碧とシャフトがグランドクロスのように私の頭の中で整列してます。

 

化物語、あるいは前回少しだけ触れたけいおん!Blu-ray売上状況がニュースになるたび、自分の買った作品とチャートが一致する状況に、自分は今確かにアニメトレンドの真っ只中にいる感覚があり、これからも人気作の芽を次々と見つけ出す自信にあふれていました。

 

じぇ「私が面白いと思ったら世の中も面白いって思うんだよ」
師匠「それは順序が逆なのでは」

 

自信はあっさりと崩壊します。これに続く映像化プロジェクトに偽物語傷物語、以降何があったか忘れましたが、世間の評価と私の評価が大きくズレ始めました。

 

じぇ「ところで百物語の忍って平野綾ちゃんだったよね」
師匠「それ以上はいけない、きっとよくあることなんだ」

 

毎回原作を予習した状態で映像と向き合ってきましたが、シリーズを追うに従い「言うほどでもない」感覚が兆しましてね。

化物語が新しい映像体験をもって魅了したとするならば、化物語から先のシリーズは押しなべて化物語の真似事を繰り返しており、新鮮さを欠いていると思うようになり、ワクワクしなくなり、物語シリーズBlu-ray継続購入計画は頓挫しました。

なので私は「化物語化物語で終わった」と言い続けてきたのですが、世間の動向は真逆の反応を示し、むしろ売上は化物語を上回る水準になりました。

 

じぇ「どうしてこうなった」
師匠「だから順序が」

 

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いい内容だった

決して、作品やファンの皆様を貶めたいわけじゃないんです。ただ、そこまでか?という感覚がいち視聴者としてどうしても拭い切れないというか、いったい何に盛り上がっているのか、どの辺に魅力を感じているのか、化物語インパクトを知っているだけにだんだんと分からなくなっていったのです。

別会社の同期で自宅に6,000冊を超えるマンガ蔵書がある友人も「読みにくい回りくどい気取ってる鼻につく」と西尾維新さんをケチョンケチョンに酷評しており、また世の中には一定数の西尾維新アンチなるものが存在することは知ってます。

私は彼らと同調したくありません。悪意漲る記事を読んで共感したと思われるのも癪だし、あまり親しく情報交換したい人たちではないなと正直思います。どの世界、どの分野でもアンチと名のつく人たちは人品を疑うレベルです。もっと冷静にならないと。

 

世間が遅れているのか、私が世間に乗り遅れているのか。同じ制作会社のシャフトによる2011年の魔法少女まどか☆マギカが評価されるに至って、いったん私の感覚との一致を見ることになります。

が、その後も私の評価するアニメ=世間も評価するアニメという黄金伝説はズレてゆく一方で、最近は売れるアニメを一切敬遠するようになりました。

進撃の巨人、天気の子、鬼滅の刃Fate/zero空の境界以外の型月関係、麦わらの一味、最近ではウマ娘とオッドタクシーですか、全無視です。ただしラブライブは除く。最近は「売れる」ということに対して、私が見なくていいものだと思ってます。ただしラブライブは除く。最初の期待値が高いと評価が厳しくなります。構えて見ちゃう。ただしラブライブは除く。ラブライブを見ない奴は全員地獄行き。

 

アニメの選球眼、とでもいうべきものについて考え始めた時期がこの頃でした。サラリーマンとして働きながら、全てのアニメを週末ごとにチェックし続けることへの限界を感じ始めた時期でもあります。

次回は……おそらく2011年、私のアニメキャリアを語る上で外すことのできない魔法少女の物語についてお話しします。さっき言ってたような気もするけど。