working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

アニメと私(5.5)

ポストシーズン阪神は弱かったですね。普段あまり見る機会のないオリックスの試合のほうがよっぽど面白いです。10年以上前に薬剤師と交際し始めたころ、

 

じぇ「どっか行きたいとこある?」
薬師「うん、野球見に行きたい!」

 

まさかぎゅう詰めの阪神電車に揺られて甲子園まで行く気かと思いきや、大阪ドーム(現在の京セラドーム大阪)を指定されてちょっと安心しました。オリックスの主催試合を希望するなんて実は物凄く野球に詳しいのではないか?とか、阪急か近鉄以来の熱血ファンだったらどうしようとか、夜の首位打者は俺やとか、しょうもないことを考えながら、ファンクラブ経由でチケット予約して、外国人監督に背番号を強奪された後藤光尊のレプリカユニホームを着て、ドーム前千代崎駅で待ち合わせして着席した彼女のセリフ(要約)は以下の通りです。

 

阪神ちゃうの?前にテレビで阪神やってたよ、か、かね……金村!
・屋根あるからこっちの方が快適と思ったのに、そうでもないわ
・知ってる選手いーひんねんけど、てか知らんチームwww
・あれヒットなん?転がってるのに?飛んでないやん
・え、帽子買ったん?知らんチームのいらんわ
・とりあえずビールまだ?

 

まだこの頃はそういうものかなと思ってたんですけど、野球を根本的に理解してないのに野球を見に来て、当然フランチャイズ球場の概念など知っていようはずもなく、阪神が見たいという割にアニキの名前もしどろもどろで間違うし、近鉄以来オリックスを応援している私の前でチームをdisり倒し、野球分かってへんくせに球場の雰囲気が好きとか言い出して、挙句の果てに真ん中に縦線入ってる錠剤を割ったら80円もらえるとか役に立たない業界トリビア教えられて、夜の首位打者ホームランどころかバッターボックスにも立たせてもらえなかったその日、オリックスは負けました。

球団統合のごたごたがまだ残っていたあの頃と比べると、オリックスは本当にいいチームになりました。若手の実力者がめきめき育って、入団以来長いトンネルが続いた長距離砲が覚醒して、とても明るい雰囲気で野球やってるなぁと思います。この勢いで日本シリーズも突破していただきたいですね。私は忌まわしき思い出を乗り越えるよう努力しますので。

 

シリーズ記事の再開にあたり、2回目のワクチン接種前後に残した下書きを眺めて考え込んでしまいました。身体の調子の悪さは文章にも表れます。魔法少女まどか☆マギカ(以下、まどか)は一度取り上げてました。

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記憶力の低下は衰えの前兆です。同じ話をするのもなぁ、なんか違うこと書けないかなぁとか考えているうちに10月の番組改編期をまたぎ、BS11鬼滅の刃の2話連続放送が始まりました。

 

飲み友のお坊さまが言う通り、ここ数年でメガヒットを飛ばす作品への関心が希薄になりましてね。加齢に伴って今までのようにたくさんアニメを見ることが出来なくなったこと、十数年の経験知で見る前からだいたいどういう作品か分かってしまうことのほかに、面白いよ、みんな見ているよ、と言われるほどあまのじゃくになってしまうことには理由があります。

 

10年前、アニメ専門誌のみならず、スポーツ新聞、ファッション誌、文芸批評誌までもが寄ってたかってまどかを取りあげ、アニメのはるか外側にいる人にも知覚される濃度の運動が展開されました。お話を単純なお話として読まない人達による精緻あるいは妄想的な読みが詰まった分析記事がいっぱいあった一方、お話を単純なお話として読む人向けに可愛いとか可哀想とか運命とか理とか多少難しい言葉をまぶしたライトな記事もありました。ライトでいい。

 

深夜アニメとして異例の注目を集めたそんな折も折、批評家の東浩紀さんは冷めた態度で「タイムループものなんてエロゲ―でやりつくしたじゃん、何いまさら盛り上がってんの?バカなの?」に近いニュアンスのことを言ってましてね。この人は東日本大震災直後、余震に怯えながら東京から伊豆に疎開したのを覚えていますが、なんだかんだ言いながらまどかで描かれたワルプルギスの夜とシンクロして余りある状況にビビっていたのでしょう。この狭い日本列島で予知困難な地震に対する疎開行動に科学的な意味があるのかどうかはともかく、東京の都市機能、自然災害に対する脆弱さより、日々の言動に起因する有象無象からの襲撃リスクの方が高い気がします。もっとも、屁理屈オタクにそんな覚悟持ってる奴おらんと思うけど。最近覚悟とか関係なくそういうこと起きるのマジで怖い。

 

東さんが全世界のまどかオタクファンを敵に回した態度の背後にあった感情と、いま私が鬼滅の刃を見ることもなく漏れ伝わってくる話から勝手に想像していうことには、かなりの類似性があります。鬼滅の刃で表現されていることは、おそらく過去十数年のアニメ視聴履歴のどこかで見たことがある、そのおいしいとこどりのオンパレードではないのかと。流行は世代が一巡すれば繰り返すものだから、その既視感があるから乗れなくなってしまうんだなと。もっと新しいものが見たいのに、新しくない気がするから敬遠しちゃうんだなと。

 

とはいえぽつぽつと鬼滅の刃を4話まで進めてみて、ジャンプ系によく見られる仕込み感があり過ぎて面白くないギャグシーンには目をつぶるとして、さすがニニンがシノブ伝を世に送り出したufotableだけあって映像のクオリティが素晴らしいのは間違いありません。

ですがやはり、妹を人間に戻す旅は弟の身体を取り戻す旅であり、見境なく人を食らう鬼は異界の使徒や何者かの陰謀によって大量発生したゾンビであり、やがて遭遇するだろう高位の鬼は敵対する組織の幹部であり、悪を悪と認識しない冷徹な思考の持ち主であり、主人公と旅を共にする手勢や仲間は悟空八戒悟浄か犬猿雉であり(服の色もそんな感じですやん)、グロテスクを免れない怪異譚でありながら、主人公の努力と友情と勝利をしっかり盛り込んだ、ジャンプの伝統と鉄則をしっかり弁えた作品という理解に落ち着くのです。そこまで知っていればこの後の展開を追う必要が果たしてあるのかどうか。

 

そういえば、書きたいのはフラクタルでアニメ制作に中途半端に関わったがために発言力が低下した評論家の事ではなくあおちゃんの代表作のことでした。まどかがなければGOSICKを見ればいいじゃない。というわけで次回にいたします。調整登板みたいになってしまった。