working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

物語の強度

注記  宝石の国について、しれっと物語の核心に触れる話をしています。体系立てて、順を追って、画像を挟んで、てな具合にどなた様かの1話感想ブログ並みに丁寧かついやどう考えても著作権法に抵触してるだろアレな仕事ではありませんが、物語そのものの説明を省いてるのに間違いなくネタバレを冒してます。回避したい方は閲覧をお勧めしません。こんなに丁寧に案内したんだから、読んでしまっても私は悪くないぞう。

注記の追記  ※その後「初めて宝石の国を見聞きする人にいきなりネタバレ読ませるってブロガーの倫理的におかしいんじゃないか、gentlyあたまおかしいんじゃないか」と思い至りましたので、ネタバレ該当部分を白文字にしました。そこを読みたい方は選択状態にすると背景色が反転して読めるようになる、はずです。

 

皆様こんにちは。宝石の国最新12巻が出たのでさっそく買いました。

あえて文字にするなら、無

9巻まで読んだのがいつのことだったか……あんなに可愛くておバカだった主人公・フォスフォフィライト(以下、フォス)が巻を追うごとに身体を欠損して、その補填を繰り返して、まるで別人になってゆくさまを「成長」と呼んでいいのか?と考え始めたあたりから話についていけなくなりまして、10巻から先を読んでません。

……ここから下、しばらくの間は空白ではなく文字色を白くしてネタバレを回避できるようにしました。お読みの際はドラッグで選択状態にしてください。そんな大したこと書いてないですけど、ネタバレには違いないので。

 

頭部が入れ替わった時は他の子と一緒に「お前、誰やねん?」ゆうてました。あんなのフォスじゃない。有能すぎるインクルージョンがフォスをこんなにも変えてしまったのかと思うとつらい。何かを失って何かを得る、この失う代償が大きすぎます。あのフォスはもうどこにもいません。

月の輝きの理由にも絶句しました。こんな悲しい所業をもって金剛先生の機能回復を願う月人は常軌を逸してます。金剛先生はなんで壊れてしまったのか明かされていませんので、今後の展開がどうなるのか気にはしています。人間は絶滅したのではなく、骨と肉と魂に分かれて住む世界を違えただけなのであって、いずれ統合される日が来るのか、来ないのか。魂である月人が世界からの消滅を願うことすなわち文字通りの消滅、あるいはそれ以外の何かを意味するのか。ただ、これ以上悲惨な展開を見たら私の心は硬度3半以下なのでぽっきり折れます。年内には読み始めると思いますが、入念な心の準備が必要です。

 

↑ネタバレ該当はここまで

そんな宝石の国を認知したのは2017年の暮れにテレビ放送されたフルCGアニメです。あの前後にシドニアの騎士があって、ぬるぬるした違和感のないところまで進化したんだなぁ、テクスチャもつるつる一辺倒だったのが、シドニアの機体の古さ、埃っぽさとか汚れとかを再現出来るようになったんだなぁと感心してたら、今度はつやつやキラキラのすごく綺麗な子達がやってきたワクワク感がもう5年前か。時間経つの早いですね。

ソファがフォスの色だ 今気づいた

ジャケイラストは西田亜沙子さん 道理で色っぽい

キラキラ、可愛いを期待して見始めた宝石の国は、油断して見入っているとむちゃくちゃ疲れるアニメでした。考えさせる、あるいは萌えやロリなど安易なキャラ付けやエロ要素で媚びない作品群を、ネットスラングでは一括して質アニメと呼ぶそうですが、人気のあるアニメは軒並み高品質なのに何当たり前のこと言ってんだ程度にしか思わないのと、人によって意味が広すぎるのと、なんかこの言葉数年単位で意味変わってないか?と思うので、代わりに「物語の強度」と呼ぶことにします。私の心は強度に耐え切れないのに、強度のある物語が好きなのです。要するに変態です。

 

2014年には「このマンガがすごい!」にも選出されています。作者の市川春子先生のインタビューが興味深いのでリンク貼っときます。

https://konomanga.jp/interview/8866-2

↑なんかうまく表示できんなぁ

モノトーン原稿で宝石のキラキラ感なんてどうやって出すんだ?って思いますよね。一部コマが画像化されてますけど、ダイヤモンドがキラキラしてるでしょう?そして可愛いでしょう?フォスのアホ可愛いのと違って正統派の可愛らしさですよ。アニメの茅野愛衣さんの演技もキュートでとてもよかった。「食卓の最後を、このわたしが飾ろう」と同じ人とかウソやろ。黒沢ともよさんの、ちょっと抜けてるけど元気が取り柄のフォスの可愛さと対照的です。でもねこの世界、性別が消滅しているの。それでもそこはかとなく、原作もアニメも色っぽいの。だから私の中ではみんな女の子です。記事の2ページ目でマンガ1巻発売記念のPV(CGではない?からか、フォスの顔が幼い)が見られます。見たことない方はどうぞ。こっちにはティザーはめ込んどこう。衝撃を受けると思います。

あらためて見ると、ティザーにも「成長」の文字が含まれてるなぁ。確かに原作5巻、アニメ8話までのフォスはまだ辛うじてフォスだから成長といえるのかもしれませんけど、アンタークチサイト後のフォスを見たときは胸が張り裂けそうでした。liquescimusの変則エンディングはズルい。あんなん聞いたら泣く。伊瀬茉莉也さんの演技も沁みた。

アニメを制作したオレンジ代表・井野元英二さんが初の元請作品として気合注入しまくった話もとても面白いのでこちらのインタビューもどうぞ。

ascii.jp

こうやってクリエイターの皆様のインタビューを読みながらブログを書いていると、自分があの時この作品の何を好きになって購入したのか、ふわふわと思い出すのです。初めてアニメを見たときの、原作が意図したであろうキラキラがもし実在するとしたらこうだろうなと納得しかない美しさと、井野元さんが触れている10話のダイヤモンドのノーカット長回しの恐怖感と迫力、至るシーンで動画の労力を無視した軽快な動きの連続と、声優さんが尺に合わせる気配を感じさせない自然な演技は総合芸術の極致です。フルCGなら手描きの原画や動画よりずっと工数が少ないんじゃないかと私も勘違いしてました。全くそんなことないんですね。

 

さて、物語の強度と言いながらどの辺にそれを感じるのか書いてませんでした。個別のシーンに対する感想だけでは皆様に読んでみよう、見てみようの気持ちが起きてこないので凝縮すると

 

生あるいは死とは何なのか

 

です。ありふれてて飯噴きそうになりましたか?この後もっと月並みなこと書くから!

 

骨のように硬い体のインクルージョンが機能し続ける限り死の概念から解放されている宝石たちがいて、寿命に限りのある海の生物たちがいて、実体が限りなく脆い魂の存在たる月人がいて、生き続けることの苦しみ、死ぬことへの恐怖、今の私たちが少なからず持っている月並みな負の感覚とかけ離れた時空にいる彼ら、特に宝石として生を受けたフォスたちにとって、月人の脅威を除けば永遠ともいえる時間の中で、何に喜び、何を悲しむのか、存在する、しないとはどういうことなのかを考えさせられるのです。

 

……度々失礼します。ここからまた一部ネタバレを含むので文字色を白くしてます。

月の輝きのために、金剛先生の悲しみを増幅させるために粉々にされてしまった宝石たちは果たして不幸なのか。「生命に限りがあることって、じつは幸せなことかもしれない」と市川先生のインタビューにもあったように、いずれ死をもって無に帰することが分かっている(お経の世界では極楽か地獄に行くことになるそうですけど)私たちは、死を知らない(知らなくても死んでしまった)宝石たちの、どうあることが幸いなのか、限りない生を謳歌することが幸せなのか、宝石以外に姿を変えた他の生、特に消滅を望む月人の魂はどうすればよいのか、この世界の生と名の付くものの全てが元々人類であったことを思うと、

↑はい!ネタバレ該当ここまで!

頭の中がぐるんぐるんしてくるのです。すべての生の幸いを願いたいけど、この話はどこに着地するんだろう?このぐるんぐるんが好きなのです。要するに変態です。

 

……こんな次第で、私は宝石の国のアニメ2期を心待ちにしているのですが、井野元さんのインタビューを見ていると計り知れないご苦労があるようで、ヒットしました、はいそうですかと簡単に続編制作発表に至る段階ではなさそうです。原作は12巻まで来ましたので、1クールのストックは十分あるの、かな?とほんのり期待しています。こういうコアな情報を知りたい時にGoogleまとめサイトとか検索上位にあげないで欲しい。私に言われたくないだろうけど、あの拭い難い俗臭はどこから湧いてくるのか謎。決まって無料で読む方法だの見る方法だの挙げてるのはものすごく感じが悪い。クリエイターにちゃんと金払う意思くらい示せ。

 

と、言いながらね?2022年12月末までの期間限定でYouTubeが全12話を無料公開しています。今ならタダで見られますよ。

www.youtube.com

 

追伸
……全く関係ない話ですが、本記事をもってはてなブログを開設して以来初めて月間10本目の記事をアップすることが出来ました。アメブロ時代は書くことそのものが楽しくて何の推敲もせず月間20本以上書いてましたが、記事本数を絞ったのはもっとだらだらして楽したいからです自分の文章にそれなりの強度を持たせたいからです。そのためにできるだけ多くの人の目に触れて意見を聞く必要があります。そうしないと人は成長しません。少し前の記事でも奇妙な違和感、青臭さを残すことなく書けるようになれたらいいなと思ってます。思ってるだけでなくやります。細く長くやります。