皆様こんにちは。いきなり、カティアちゃんが絞殺されちゃったんだよ。
彼女が動かなくなるまで頸椎をきめ続けた仮面の下手人は、手足を拘束されて動けない車椅子のgentlyに向かって「次はお前だ」と言わんばかりにゆっくり、ゆっくりと近づいてきた。
死ぬって怖い。覚えのない誰かに殺されるのはもっと怖い。
そして理不尽極まりない。無抵抗の美少女を手にかけただけでは飽き足らず、拘束趣味が高じて自分を緊縛することに快感を覚える変態おじさんまで殺すとか意味がわからない。
なぜ、何のためにこんなひどいことをするのか。
そして結末を見届ける前に、仮面の男が近づいてくる恐怖に耐えかねた私は押っ取り刀で頭部に固定したVRセットを外したのです。
カティアちゃん、ごめんなさい。君を助けられなかった。私はいつでも逃げられるのに、君はゲームの中で何度も何度も殺され続けるのだろうか。痛いよね。苦しいよね。オカリンやほむらちゃんの気持ちがほんの少し垣間見えたけど、彼らのように君を見届けるだけの勇気すら私にはないんだ。それが何よりも情けない。
こんな弱い私でごめんなさい、ごめんな、さ……嗚咽。
PSVRを自宅配備して2年経ちました。
MacBook Airを買ったときと同じ、これから新しい時代が始まるのだ(私はただ金を払っただけだけど)という謎の高揚感に包まれながらそそくさとセットアップし、宮本ひかりちゃんの無防備に露出した体の各部位を眺め回して欲情したり、アリソン・スノウちゃんが喜びを爆発させて「teach me everything.」と抱きつかれた耳元で囁かれて欲情したり、新城ちさと様がことあるごとに侮蔑的な視線を投げかけてくる不条理に欲情したり、リズムを集める使命そっちのけで前を飛んでるネオンちゃんのスカートの中を覗こうと欲情したり、鬼頭明里さん演じるキャディに私服着せてラウンドしながら欲情したり、新しい時代とは欲情の時代でしかなかった私に劇的な変化をもたらしたのが「LAST LABYRINTH(ラストラビリンス)」です。
ゲームを支配するルールは単純です。部屋の仕掛けを解いて、脱出できれば成功。失敗すれば死あるのみ。
ただし、操作者には致命的な制約があります。自分の意思でゲーム空間を移動することができません。なぜなら、車椅子に乗せられ、両手両足を完全に拘束された簀巻き状態だからです。
許されている行動はたった3つ、手に持ったスイッチでレーザーポインタを発光させ対象物を示すこと、意思表示の証として首を上下もしくは左右に振ること、左手の鈴を鳴らして、美少女を近くに呼び寄せて欲情することです。
正直、3つ目の機能が機能として必要なのかよく分かりません。彼女を近くに置いて眺めたい人向けだろ絶対そうだろこれ。
この制約をカバーしてくれるのが美少女・カティアちゃんです!
なんせ可愛い。小学校高学年から中学生くらいかな。彼女が操作者のポインタ指示に従って対象物に接近し、これを動かすの?と指差して聞いてきます。操作者は首振りで意思を示し、行動の可否を決定します。
そして彼女にも行動上の制約、意思伝達の不確実性があります。つまりこちらの指示を正しく理解したかどうか、言葉で確認し合うことが出来ないので、行動結果が出るまで「どう行動するのか」が分からないのです。
例えば右に動かしたいのに、左に動かしてしまったり、対象物の近くに行くだけでいいのに、対象物に断りなく触ってしまったり。操作ひとつで仕掛けが発動してしまうかもしれないこの手のゲームにおいて最も注意深さが要求される部分です。
ところで言葉が通じないと書きましたが、彼女は話します。どこの異世界とも知れない、聞いたことのない言語で。「ICO」のツノ生えた坊やよりちょっと背の高いお姉さん、無力でか弱くて守ってあげたくなるあの子がなんか一生懸命しゃべってるあれとよく似てます。
VRヘッドセットを通じて聴こえるカティアちゃんの声は最高に可愛いです。何か話すのを聞きたくて、絵とか無駄にポインタ指示してみたら案の定なんか喋ってるんですよ。
絵についてなにごとかを語るカティアちゃんをずーっと眺めてるだけでいい。ぜんっぜんわかんないけど。間違えたら死んじゃう謎解きなんてもういいじゃん……この部屋で暮らそうぜ。
カティアちゃんの中の人については公式サイトはじめ秀逸なレビュアーが秀逸な文章で秀逸な記事を書いてますのでそちらを参照してください。私はメタルギアソリッドを3で諦めた人間なので、クワイエットとか言われても全然ピンとこないのです。「ライトでいい」並にピンとこない。
そして皆さんが購入にあたって最も気になるであろうポイント、ゲーム本編のレベル感ですが、先日41歳になったばかりのサラリーマンの頭脳で1問あたり20分程度を要するレベルです。書いてみて思いました。これでは全然わからん。
主観を交えてお話しすると、謎レベル自体さほど高いとは感じませんでした。
他レビュアーさんによると、部屋によって難易度にばらつきがあるようですが(特に天秤の部屋がヤバいとかなんとか)、4部屋クリアした私が最も難しい、意味がわからない、カティアちゃん大好き!と苦悩したのが、鉄道模型とギロチンの部屋です。
私は座した一点から動くことが出来ないので、首を振り回して全体を見渡しながら、何がどのような仕掛けになっているのか理解するまでに30分以上かかりました。仕掛け上、ボタンを押して発動する=完全な状態にしないとカティアちゃんが死んでおそらく私も死ぬので必死になるのです。必ず死ぬと書いて必死。よく出来た日本語だ。
謎レベルは高くないのに何を必死になるのか。それは、一見解けたような気がしてうっかり仕掛けを発動したら、カティアちゃんがとても無残な死に方をするからです。
ある秀逸なレビュー記事は「死の重さ」を取り上げ、最近の「死にゲー」と呼ばれるジャンルにおける死の軽さ、回復の早さに対して、このゲームは人が死ぬ、殺されるとはどういうことかを不必要なほどに見せつける、と書いてました※。
まさにその通りで、万が一謎解きをしくじると、目の前でカティアちゃんは泣き叫び狼狽えながら死にます。そして我々は彼女を救うこともできず、殺される様子をただ座って眺めていることしかできないのです。これはフィクションとわかっていても非常に辛い体験です。
※こっちの方がよっぽどためになると思うの。
そしてプレイヤーは謎解きに対してかつてなく慎重になります。所詮ゲームだから、何度彼女が死んだってやり直しはきくのだとしても、人の心があるならば到底耐えられる光景ではありません。
二度と彼女を苦しめないように、慎重に慎重を期して仕掛けを見破ろうとするあまり、レッドだったサインがグリーンに切り替わっても「本当にこれで正解なのか?」と疑い、間違いの可能性はないか、他に見落としていることはないか、徹底的に検証するのです。死んでもいいや、失敗してもいいや的な、ユーザーのお気楽な向き合い方を断固拒絶しています。
それでさ。脳みそ絞ってノーミス気取って4問解いてさ。よし、自信が出てきた、5問目行こうぜ!てなってさ。その5部屋目でさ。
今までなんの疑いもなく電気スタンドの紐をカティアちゃんに引っ張らせてたんだけどさ。真っ暗では何にもできないし、そもそもカティアちゃんいるのかどうかもわかんないからさ。そういうルーティンだと思い込んでたのさ。
周りが明るくなったらさ。カティアちゃんの真後ろに仮面野郎がいたのさ。カティアちゃんびっくりしてさ。逃げようとしてさ。逃げられなくてさ。チョーキングされたまま部屋の外に連れ出されてさ。半開きのドアの向こうにさ。カティアちゃんの頽れた両脚が見えてさ。一仕事終えた仮面野郎がさ。今度はこっちにやって来たのさ。ゆっくり、ゆっくりとさ。
……怖くね?
あのままVRつけてたら私死んでた。
初見殺しという言葉があります。これ以上のダメージを受けた初見殺しは私の人生経験上ありません。私の油断と思い込みが招いたミスです。
いや、気づきはあったんです。なんとなく電気スタンドの位置が違うなと。これは何かあるんじゃないかと。あの部屋の続きをやろうと心に決めたものの、そこに仮面野郎がいて、カティアちゃんがあんな苦しい死に方をするかもしれないと考えると、最初の電気スタンドがどうしても点けられない。暗闇状態から何ができるんだろうか?
このような次第で今、私は絶望の深淵におります。心ある読者様、どうかgentlyをサルベージしていただけないでしょうか。