working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

アニメと私(3)

皆さんは、あおちゃん好きですか。私は大好きです。

 

2008年4月から始めた地上波アニメの録画視聴は私の新しい趣味になりました。2003年に購入したパナソニックプラズマテレビにはEPGが標準装備されていたものの、2002年から使っているパナソニックのDVDレコーダーは未対応だったためどうしていたかというと、EPGでアニメ番組を確認したあと、Gコードで予約していました。知ってます?Gコード。放送局と時間帯のデータが乗っかったランダム数列がラテ欄にひしめいてましてね。この数列をぽちぽちアナログ入力すると、予約が完了するのです。

当時はサンテレビボックス席が最大の宿敵でした。知ってます?サンテレビボックス席。主に甲子園球場で開催される阪神タイガースの主催ゲームを試合開始から終了まで放送する、サンテレビの存在意義の9割超を背負っている金看板です。試合時間が長くなるとサンテレビボックス席の放送時間が延びますので、そのしわ寄せがアニメ王国の深夜帯にやってきます。Gコード予約は時間追従などという気の利いたことができませんでしたので、野球がどれだけ延びたか確認して、アナログ予約をやり直していました。それにGコードは毎週放送するアニメ番組ごとに割り振られるためほぼ毎日ラテ欄を確認する必要があり、どうせ録画時間が固定されているなら毎週予約を設定した方が賢いと気づくまで1クールを要しました。

 

それでも。新しい趣味を始めた私は心がときめいていましたので、毎週20本以上のアニメ番組を見ていました。その1クール、2008年4月〜6月に放送された中で私の心を捉えたのが紅で、初主演したあおちゃんこと悠木碧さんでした(以下、あおちゃんに統一)。

f:id:working-report2:20210918052056j:plain

パーツで紫ちゃんだとわかる

ざらついたアナログ画質で見る紅は実に味わい深かったです。新大久保界隈のきったない安アパートの描写はおそらく制作スタッフが意図した以上に汚れて見えました。Blu-rayBOXで美麗に見せる意味があるのかと思うくらい。そんな汚れた沼に咲く白蓮のような女の子、九鳳院紫を演じたあおちゃんのこまっしゃくれた台詞回しが、仕事もプライベートもうまくいかない私の心の穢れを洗い流してくれました。

秀逸なのは第5話(だったかな)、電車で乗り合わせた不良相手にへいこらする紫のボディガード、紅真九郎に向かって怒りを爆発させる場面です。真九郎役の沢城みゆきさんとの言い争いの勢いが凄まじくて、30秒ほど口を開けて眺めてました。役者の息の合わせ方やテンポで演技してもらった後に絵をつける手法のことをプレスコというそうですが、後にも先にもあの口論を上回る迫力を他のアニメで見たことはありません。

7歳児相手に可愛いを連発する不惑を過ぎたおっさんの構図は置いといて、紫ちゃんは格式高い家のしきたりから一時的に逃れてきたスーパーエリートなので、貧乏極まりない真九郎との生活に当初こそ不満タラタラでしたが、順応していく様子がめちゃくちゃ健気なんです。心の移ろいとともに次第に演技が柔らかくなっていく悠木さんは本当にお上手でした。現場の緊張感に徐々に慣れていったご本人の境遇もあるのかもしれませんが。

 

テレビアニメを見ながら作品への没入と同時に兆してきたのは、アニメ作品を録画ではなく製品(パッケージ)として所有したい、オタク特有の欲求です。エヴァを買いにヨドバシカメラへ走った時と少し違うのは、時間の淘汰によって評価が確立された作品ではなく、自分がこれを見つけてきたのだという先駆者感があり、いずれ紅の面白さを私の周辺にいる人たちに広めていくことになるのだという、ノブレスオブリージュのようなものもありました。前回お話ししたCLANNADのDVDはAFTER STORYの放送中(2008年10月から2019年3月まで)、紅の後に大人買いしたので、テレビアニメを見て選択的に購入したのは紅が最初ということになります。

 

録画と製品は全然違うんですよ。放送電波にはどうしてもノイズが含まれるので、映像のちらつきが目立つのです。アナログ放送時代は特に酷かったですね。当時最新鋭のプラズマテレビだったのに(2003年の冬のボーナスはたいて60万で買ったんですけど、この話は新しいブログに載せてませんので改めて)ブラウン管で見ていた頃よりも映像が悪かったと思います。とても録画保存できるコンディションではありません。

 

よく言われることですが、アニメ製品、中でも高額な映像ディスクを購入するのはお布施なのだという言い方をするアニメオタクがいますね。声を大にして言いたい。それ違うから。代価を払って商品を手に入れ、その商品を消費している以上、お布施と呼ぶべきではないから。だいたい私たち、そんなことで徳積めないから。積むのは業だから。罪に溺れし業の魂はいっぺん死んでみるしかないから。

 

製品情報を調べて驚きました。2話入りで5,000円を下回っている。

……誤解のないよう申し上げると、紅のDVDは相場的にかなり安い水準なのです。2話入りの平均的なDVD価格は6,000円台中盤が主流で、同クールでもう1本購入を決めていた我が家のお稲荷さま。で2話入り8,000円オーバーが1年間続く(全12巻が毎月1巻づつリリースされる)ことを考慮すると、破格と言っていい金額なのです。好きになった作品がめっちゃ廉価で販売されている。こんなに嬉しいことはない。そして我が家のお稲荷さま。にそれ以上言及しない時点で現在どうなったのかお察しいただきたい。

なのでただちに会社にほど近いアニメイト京橋店へ予約しに行きました。サラリーマン風の20代中盤の男が、7歳の幼女が活躍するアニメ作品のDVD全6巻を、全巻前払い。見るだけならそれほど金のかからない趣味なんですが、こうして考えると、所有欲が芽生えたアニメ趣味ほど金のかかるものはありません。私がいくら紅のDVDが安いんですって熱弁したところで、それを聞く皆さまにはテレビでタダで見られるものになんでそんな金払うのか理解できないでしょうから。それに本文冒頭に出てきた製品がBlu-rayBOXだったということは、ええそうですね、gentlyは映像にこだわるあまり、後日再登場したBlu-rayを再購入してるんですね。どんだけ好きやねんと。

 

紅のDVDには、私が喜ぶ特典がたくさんついていました。

f:id:working-report2:20210918052359j:plain

DVD1巻の特典だったかな

まず設定資料集。私たちはこういうのを読むのが大好きです。それも折り目がつかないように慎重にページをめくりながら読みます。資料集を読み込むことでより作品世界に没入できるからです。そのシーンでなぜそうしたのか、なぜそういう描き方になったのか知っていること、さらにそれを人に語って聞かせることがたまらなく気持ちいいのです。キャラ絵の大多数にジャギーが入ってるのは低予算なのだからこの際仕方ない。

f:id:working-report2:20210918052637j:plain

寝る前に聴きたいけど寝れんくなるやつ

全巻購入特典のオリジナルCD。送られてきた時の2色刷りの紙ジャケット(CDの保護カバーもなく送られてきたので相当切り詰めてやってたんでしょう)は引越しのタイミングで散逸してしまいましたが、中身はこの通りです。

CDということはキャラクターの歌が収録されているんだろうと思うでしょう?ノンノンノン。皆さんに伝わる言葉を用いるなら、これはラジオドラマ集です。作中登場する紫ちゃん役のあおちゃんの他、真九郎の情報提供役として、あるいは彼女的な存在として、くっつきそうでくっつかない村上銀子役の升望さん、ゆるふわと書いてガチと読ませるタイプの見た目最高で天然ぽくて実は計算高い崩月(ほうづき)夕乃役の新谷良子さんが入れ替わり立ち替わり、私の耳元でキャッキャウフフしてくれるんだす。たまらんだす。公共の場でイヤホンしながら聴いていると福笑いみたいな顔になってると思います。

f:id:working-report2:20210918052747j:plain

やっと紫ちゃんビジュアル登場

そして、各巻についてきた紫ちゃんのスティックポスターを収納するためのバインダー。これは店舗別購入特典なのかな。私はアニメイトの袋に入らないこれをえっさほいさ担いでね、JR乗ってね、最寄駅で降りてね、家まで歩いて帰ったわけだ。職務質問待ったなし。でもその甲斐はありました。

f:id:working-report2:20210918052837j:plain

ぱにゃまえにゅーにゅーのんえうー

f:id:working-report2:20210918052936j:plain

最早言葉を必要としない

な?可愛いだろ?

 

深夜アニメのそれ以前の歴史を身をもって体験していないので、私の感覚が間違っている可能性は十分あると思っていただきたいのですが、こと紅に関してはえもいわれぬ深夜アニメの格というか、学生時代に見ていた深夜放送の世界遺産に近い、大人でもよくわからない世界を見せてくれた気がするのです。テレビ東京系の中でも最も遅い時間帯、日曜日の午前3時ごろの放送も影響していたのかもしれません。

 

原作も漫画も持っていたのですが、引越しのタイミングで荷物を減らすために売り払ってしまったので、今残っているのは

f:id:working-report2:20210918053135j:plain

もう13年経ちましたか

 

声優さんって歌えるんだ……を初めて私に教えてくれた新谷良子さんのエンディング曲。拙い筆力では言い表せない、深夜アニメを見ている人のメンタリティに刺さる声とテンポで、この曲がかかるたび「お前ら早く寝ろ」と言われているような気がしてました。

f:id:working-report2:20210918053233j:plain

テレワーク時必聴

作中の音楽を手がけた村松健さんのサウンドトラック。私サントラなんて滅多に買わないんですけど、紅と空の境界R.O.D  は別格。ピアノ主体のBGMは最高にクールでした。こういう空気を纏うアニメをもっと見たいのになぁと思いますよ、まったく。

 

今回は紅の話に終始してしまいました。だって好きなんだから仕方ないじゃない。これ以降、あおちゃんはアニメ界屈指の名作に登場し、名声がうなぎ登りになってゆくと同時に、私のアニメ視聴歴においても不動の地位を確立します。あにゃまる探偵キルミンずぅのくちゅくちゅとした幼児特有の喋り方がめちゃくちゃ好きでした。あの3姉妹で一番好きなのは一番上のお姉ちゃんでしたけどね。怖い犬に囲まれて威嚇するために「わん!わん!」てほえるのが心に突き刺さりました。今調べたら、あれ安済知佳さんだったのか。

次回は2009年4月、Blu-rayレコーダー導入と同時に始まったある作品の続きと、遅れて知ることとなる平凡で非凡な女子高校生たちとの出会いについてお話しします。