working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

お盆と大戦(後編)

皆様こんにちは。今年は長い休みが取れそうなので、1日くらいは戦争にまつわる映像作品を見るつもりです。

 

火垂るの墓
私は貝になりたい(1959年版)
ミッドウェイ
226
日本のいちばん長い日(1967年版)
プライド 運命の瞬間
シンドラーのリスト
スパイ・ゾルゲ
パリは燃えているか
この世界の片隅に

 

これまで見てきた中で思い出せた第二次大戦がらみの映画はこんだけです。226は含んでええと勝手に判断しました。映画趣味の方からすれば圧倒的に少ないでしょうね。特に最近のは全く見てませんし。

火垂るの墓は小学校低学年のころ映画館に連れて行かれて、なんちゅう退屈なものを見せるんやと当時は思っていましたが、大人になってからこれを見るのは本当にしんどかった。おはじきのシーンなんか声上げて泣いてしまいます。今や思い出しただけで泣いてしまう。野坂昭如の原作にそんなシーンはありません。新潮文庫から出ていますのでご興味ある方はぜひ。

www.shinchosha.co.jp

 

フランキー堺主演の私は貝になりたいは、戦勝国による敗戦国の断罪とはかくも理不尽なものか、まともな裁判さえ受けさせてもらえないのか、人の命がかかってる弁明の日本語通訳雑すぎじゃね?もう比じゃない、凄すぎて言葉が出ません。なにとの比かは言わんけど。所ジョージのテレビドラマも人柄がにじみ出ててよかったですけど、やはりフランキー堺です。太平記長崎円喜も見事なヒールだったし。

 

この世界の片隅には過去に感想を書いたので詳述は控えますが、映画館に2回見に行きました。2回目は当時好きになりかけてた女性と行きましたが、見終わった後

「こういう感じのってなんかしんどいですよね。自分たちと縁遠い世界で苦しんでる人の話をわざわざお金払って見なくてもよくないですか」

と言われて、あぁこの人とは暮らしていけない、オタク女子の感情移入に期待していた私がバカだった、受け止め方がここまで他人事だと私が苦しんでる時もきっと他人事に違いないと思い知りました。あの界隈の人って想像以上に冷酷。

 

ミッドウェイは切り貼りがひどいと後から言われて、ふぅんて感じです。あんまり趣味のなさそうな親父が持ってた数少ないVHSコレクションに含まれてたので、試験勉強に疲れたら日本の大敗とガース大佐の殉職を見てました。

過去作品にもミッドウェー海戦を取り扱った映画があって、ほぼそのコピーであるといった評価が見受けられます。その映画が何だったか思い出せない。ただ私は三船敏郎の流暢すぎる英語がすげぇなと思いました。あんなの練習で何とかなるレベルじゃない。

 

それ以外は学生時代、あるいは社会人なりたての頃に1回見たきりなのでうろ覚えです。特に226はちゃんと見直したい。永田鉄山の殺害に始まる皇道派クーデターの一部始終を描いた作品は、たぶんこれ以外にないと思うので。中学生ぐらいのときに見ましたけど、ハラハラし通しでした。

 

……ただ、私がもっとも衝撃を受けたのは、プライド 運命の瞬間です。

filmarks.com

フィルマークスの評価は、ふつう。学生のころに一度見たきりなので、内容もうろ覚えです。では何が衝撃だったのかって、東條英機が義務教育で教わった人物像と全くかみ合わないことです。

津川雅彦演じる東條が、孫に筆を渡して自分の腹に小さな丸を描かせるシーンがあります。これなにしてんの?てなりますよね。ピストル自殺を図った東條が、よりにもよってその位置を孫に描かせてるんです。それを見た奥さんが驚いてやめさせ、泣き崩れる。

そんなことが本当にあったのかどうか私は知りません。知りませんが、学校で教わった東條英機は血も涙もない極悪人であり、東條がいなければ戦争も始まらずアメリカの新型爆弾も投下されず日本は平和だった、東條憎しの一本調子だったものですから、これは別人か?と思うほど衝撃を受けたのです。

 

当時、本作の上映前後に反対運動が巻き起こりました。歴史を歪曲、捏造し、戦争犯罪人たる東條元首相を美化するものであるといった調子です。学生のころでしたからそれはよく覚えてます。当時取ってたのも朝日新聞でしたので、連日のように批判的な記事が書かれていました。

東條は東京裁判極東国際軍事裁判)にA級戦犯として出廷、証言し、広田弘毅元首相ら合わせて7名が絞首刑の判決を受け、全員執行されました。その後、同裁判に関連して拘留中に死亡した人物も含めて靖国神社に合祀されたことが国際問題化し、特に中国、韓国など被侵略国側の強い反発を招き、たびたび外交カードのように使われていることはご承知の通りです。

これについて個人的な見解を述べると長くなりすぎるので今日のところは割愛します。

……余談ですが、広田弘毅に関しては城山三郎の落日燃ゆが私の知識の限界です。その後、北大路欣也主演のテレビドラマにもなったんですね。見てないや。男子の本懐を読んだ時も思いましたが、城山作品の描写は史実とフィクションが限りなく曖昧になります。そういや男子の本懐もNHKドラマで北大路欣也主演でしたわ。金本位制の説明がとても分かりやすかった覚えがあります。あの話してたの井上準之助だったかな。

 

話を戻して、戦後79年を迎えようとする現在も、国外はともかく国内でも評価が分かれる歴史上の人物を映画化することのリスクがいかばかりか、おそらくドイツの映画界も十分理解していると思うんです。ましてやユダヤ人大虐殺という確定した史実があり、島国の私たちより地続きである分よほど鋭敏だろうヨーロッパにおいて、ほぼ一面的に触れることすらNOであろう人物を取り上げたこの映画がどういう評価を受けたのか、段々と気になってきたので買いました。

ヒトラー~最後の12日間~(2004年公開)。どうですか、ブルーノ・ガンツのこの佇まい。眼光の鋭さといい険しい表情といい、ヒトラーそのものですよ。

www.swissinfo.ch

少し古い2005年のインタビューですが、20年近く経った現在、ナチスヒトラーに対する嫌悪感はより凄まじくなっています。この間、揶揄気味のコメディはありましたが、なにひとつ軟化などしていません。

日本のアイドルの衣装デザインがハーケンクロイツに酷似している云々で糾弾されたり、ウラジーミル・プーチンが自国民の憎悪を扇動する目的でウクライナナチス呼ばわりしたり、私の知らないところでも数々の問題を引き起こしていることでしょう。

この映画が総合芸術としてどう評価されたかとはまた別の話ではあろうと思いますが、サブスクにないかなーと思って探してたアマプラのティザーを見る限り、ヒトラーの人物像を具体的に描くことで、やはりどこか、東條英機と同じく共感、あるいは同情めいたものを見た人に惹起させようとする意図を感じるのです。

ヨーロッパ、親米国はこのような描写を到底受け入れないでしょう。

 

邦題を見て分かる通り、敗戦が確定した後のヒトラーがいかに惨めであったかを描くのでしょう。今年の戦争映画はまずこれを見ます。プリキュアに慣れた平和頭脳がどこまでこの映画を受け止められるか、未知数です。

 

最後に、もう一つ驚いたことがありまして、

「過去1か月で50点以上購入されました」

 

絶対あれが影響してるよな、あれ。埼玉西武ライオンズはどこへ行くのか。どこまで行くのか。あれは著作権的にクロなので引用しませんけど。