working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

久々に映画館に行った話

岩合さんの世界ネコ歩きを見慣れているとPECO TVのテロップは邪魔。

 

今年のお盆も遠出できない状況だったので、もっとも遠出出来たところで実家へなんて帰るわけありませんけどご近所のモヒカンさんと塚口サンサン劇場で魔女っこ姉妹のヨヨとネネを見てきました。魔法の世界から現代の日本へ、逆異世界に飛ばされたヨヨさんが身も心も成長したり、「お母さんはここだよ」って無邪気にお仏壇に向かう幼女を見ているだけで目から汁が出てくる年齢になりました。

また、おばあちゃんの戦艦にN=ノーチラス号を、ビハクに最強の使徒を、デカいロボットにNieR:Automataを、アプリゲームで集まった願いのように見える呪いにはまどかを、「3分待つのがミソです」に笑福亭仁鶴師匠を垣間見た私はぼちぼち現世からログアウトです。ネネ派からヨヨ派に少しずつスライドしていくあの感覚、日本に飛んできた瞬間体が大きくなるところで大きくグッとくるものがありました。私、魔女っ娘となら上手くやっていけそうな気がする。

 

この作品の最もよかったところは、なんでも便利にこなせる魔法の世界から不便な世界へやって来たヨヨさんが、最初のうちはこれまでと同じように魔法を駆使して問題解決していくのですが、次第にそれが通用しなくなることで高飛車な全能感が削がれ、魔法では戻ってこない命のかけがえのなさに気づき、それまで何かが欠けたような表情を見せていた彼女がようやく人間らしくなっていく、不便を経験して人間性が磨かれていく過程を説教臭さも嫌味もなく描き切ったことです。どんな原理で生きているのかよく分からないビハクが心臓マッサージで回復したシーンはちょっと笑ってしまいましたが、あの時の彼女の喜びは魔法からは得られなかったものです。医療をよく知らないヨヨさんからすれば救急隊員は魔法使いに見えるのでしょう。

 

魔法を使える女の子がある日、出来て当たり前だったことが出来なくなった。あらゆるアニメ好きの記憶をかすめるのが魔女の宅急便です。いくつかの論考で初潮が関係しているという話を目にしますがそれ重要か?そんなシーンないじゃん?え?あったっけ?単に宮さんの変態性が露出しているだけじゃね?うわぁキモイオッサンだなぁ。ヨヨさんがおいくつなのか知りませんけど、ごくシンプルにメンタリティへの負荷を具体的に感じ始めたことの比喩でいいんじゃないかと思います。怖いもの知らずで好き勝手やってきた青臭い時代が終わり、自分の得意な魔法だけではどうにもならない物事が発生して、それでも今まで通りやろうとして失敗することで一時は信頼を失うものの、自分が見落としていた何事かをつかむことで再び信頼を回復するわけじゃないですか。見ようによってはひとりのシステムエンジニアが困難なタスクに直面して死にかけた目に遭いながらも周囲の手助けでどうにかなるストーリーと言えなくもないけれどあの世界にそんな美談は数えるほどもない。というかない。金がないとどうしようもない。

その後の物事の成否はどうであっても、一度そのやり方を身につけたヨヨさんは立派な大人です。そうやって大人になったヨヨさんが魔法の世界に帰ったらまたちっちゃくなるのはあれだ、ロリババァがどうやって生まれるのか見せてもらったってことだ。当然、システムエンジニアの世界ではその後の成否に「成」以外ありえない、まさに成か死かしかなく成が生を意味しないことは常識なわけだが。

 

そんなわけで、とてもいい映画だったのでAmazonの参考価格を見てみました。

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誰がちっさい方を姉さんと思うよ

サントラCD付き特装版の中古品で13,980円。つまり新品の取扱いがない。これはもう仕方がない。8年くらい前の映画を今見ることはできても、有形のソフトは簡単に手に入らない。いまごろソフトを買おうって方が変態的なのであって、鉄は熱いうちに打てではありませんけど、リリースしたタイミングでお金を出さなかった奴は締め出されてしまうのです。いつまでもあると思うなBlu-ray。まさに一期一会。あるいは一期一万円。一万円で済むなら断然良心的じゃないか。だいたい一万円って言うしな。渡しやすいからか「私安い」からか。……アニメの話だよな?

 

新作映画はギャンブル性が高く、よほど興味がない限り見に行かない(その興味もテレビの続編とか超メジャー作とか)私にとって、良作との出会いはテレビにしかありませんでした。時間の淘汰を経て二番館、三番館上映される作品のレベルの高さを知るいい機会となった今回ですが、昨今のコロナ禍で映画館の経営基盤が大きく揺るがされています。誰も話さず静かに見る場所で果たしてクラスターが発生するのか。単に人が集まるという理由で大規模施設として悪平等を課されているとしか思えません。人はただ生きていればそれでいいというものではなく、このご時世だからこそ娯楽の選択肢が奪われることのダメージの大きさを真剣に考えていただきたいものです。誰にだろう。白笛の声はアビスの声よろしく、国民の声とはロビイストの声でしかない政治家にか。

 

たまにはこれくらいの短さで終わります。そしてたぶんそれほど短くもないという。諸星すみれさんはほんまに演技の天才やな。これを書き終えたことで映画コメンテーターへの道が開けた気がしています。クイズ〇ックス!