皆様こんにちは。私が楽しくアニメを見ていた土曜日、首相が和歌山の港で襲撃されました。幸い首相にけがはなく、犯人は漁港の関係者にあっさり取り押さえられましたが、鉄パイプ爆弾の威力のほどが知れる激烈な爆発音でした。
映像を見る限り、警護のプロでも咄嗟の対応って難しいんだなぁと思いました。首相の警護には成功したけど、聴衆に向かって蹴るのはいかがなものか。
#不審物発見時の三原則
— Klazy-SG (@klazy_SG) 2023年4月16日
(爆発物)
「さわるな」「ふむな」「けとばすな」
(化学剤等)
「さわるな」「かぐな」「うごかすな」#警備員 でも基本的なこと。#クライシスアクター pic.twitter.com/mzY2KrA2Px
最近の報道を見ていると、犯人は選挙制度をめぐって国を提訴するくらいのことはしていたようです。テレビの報道では本人訴訟(代理人弁護士を立てない訴訟)とも言われていました。自分で訴状やらなんやら手続書類作ったんかな。
一審の判決では現在の選挙制度に一定の合理性があるとされたようですが、いまだに法律のプロたちの間で違憲性が指摘され続けています。読者様に予断を与えたくないので、日弁連がどういう組織なのかは各自でお調べください。ちなみにここに勤めてた友人は「左翼臭がきつすぎる」と言って3年もたずに退職しました。
私も選挙制度、特に供託金制度について何も思わないわけではありません。国政選挙には最低300万円、都道府県議選でも60万円を供託(法務局所管の供託所に金銭を預けること)しなければならず、一定の得票数に達しなければ国あるいは自治体に没収されます。
また、仕事を続けながら立候補し、選挙活動に取り組むことは実質的に不可能と言われています。現職の政治家と比べて、一般家庭の人には圧倒的に不利、スタートラインに立つことすら困難です。預けるだけ預けて消えてなくなるかもしれないお金を何百万円も用意できるおうちという時点で普通ではない。
このため、本気で政治を志す人は政党や支援団体に所属し、党員として会費を払い、公認や推薦を得ないことには選挙に立候補できないのが実情です。とにかくカネがかかるのです。
供託金を宣伝費程度にしか思っていない売名目的の泡沫政党は慎重に除外するとして、政党の供託金補助の有無は調べた限り明らかではなく(党が認める候補なんですから普通出してくれると思いますけど、明確な記述は見つけられませんでした)、現在の仕事との両立問題も解消しません。組織のバックアップがない無所属でやろうっていうなら尚更です。被選挙権は最も行使しにくい公民権に違いありません。
つまり、既成政党以外に政治が出来ない選挙制度になっているのです。本当に政治に携わりたかったのであれば、彼のやるべきことは爆弾製造ではなく、自分の信条、目的に近しい政党なり支援団体なりを調べ、その関係者に面会を求め、自分の考えを話し、認められ、事務所職員なり秘書なり経験を積んで政治の何たるかを学ぶことではなかったかと思います。
……ただ、その考えのまとまらなさに政治家の資質を見出すことは困難です。政治家を殺したところで選挙に立候補できるわけがありませんよね。不満の鬱積で暴力を肯定してしまうのは民主主義の否定です。爆弾を作り始めた時点で頭の中ぐっちゃぐちゃだったんでしょうけど。
その思考機序の根底には結局金回りと働くことへの意識の違い、要するに「楽して儲かる」みたいな政治家に対するステレオタイプがあるのだろうと推測します。現職の政治家がきちんと政治出来ているかどうかが問題ではなく、インターネット評論でよく見かける、利権にまみれ権力闘争に明け暮れる政治家のイメージです。
訴訟の手段を取りながら、最終的に暴力で解決しようとするその短絡性が何に由来するのかといえば間違いなくインターネットです。先の政治家のイメージが形成されたのもインターネットの偏った情報に触れすぎたからと考えれば符合します。代理人弁護士に宇都宮健児先生を指名してるあたりなんか、たぶんウィキペディアの供託金の項目で名前を見た程度のことしか知らんでしょう。本人訴訟しかできない程度に金がないのに、国選と私選の違い、弁護士報酬の概念がないのは公民的知識が欠如しているとしか思えません。
そして同じくインターネットでは「政治家は金持ち」という言説も流通しています。犯人はそれをどう解釈したのか、政治家をやれば金持ちになれるとでも思ったのでしょうか。順番が逆で、政治家をやれば金持ちになれるのではなく、もともと金持ちだから政治家になりやすいのです。犯人は政治家をやりたいのではなく、金持ちになりたいのです。
この引用記事、報酬について熱心に聞いてる様子が書かれてます。ちなみに川西市の市議会議員報酬は月額57万円です。まぁまぁいいね。
結局金目当てかよ!って話に帰着してしまうんです。政治家を悪く言いながら政治家になりたがる理由はこの辺にあると思います。今後も目新しい論点が出ることなく、一過性の襲撃事件で終わるだろうと予想しています。