working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

やっぱりカネじゃね?

皆様こんにちは。今日は政治の話題です。ここ半年ほどの私の疑問をまとめておきます。

読者様によっては不快に思われる記述もあるかと思います。特定の政治思想に対する批判は慎んで書き進めますが、かなり長くなると思いますのでご承知おきください。

 

私の地元は和歌山県の南側です。もう20年くらい帰ってませんけどね。

ええ、世間的にすっかり金満政治家、悪徳の権化のように言われている衆議院議員二階俊博(以下、二階氏)のお膝元です。先ごろ次の総選挙を機に議員を引退する旨の発言があり、その後継者をめぐって様々な憶測が流れています。

 

もう35年くらい昔の話ですが、当時元気だった祖父も親父も家業の都合で自民党支持者でしたから、政治資金パーティーの帰りにお土産のように渡される二階氏の著書や、パーティーの様子を収録したVHSビデオ、二階氏直筆の色紙などがありました。家の至る所に選挙用ポスターなんかも貼ってありましたね。

ずぶずぶの、イメージ通りの、田舎の保守派です。

そんな二階氏と直接言葉を交わしたのは、私が小学5年生のときです。祖父が死んだ数日後、秘書を伴って仏壇に手を合わせに来られました。あいにく自宅には私以外誰もおらず、やむなく仏間にご案内して応対しておりました。

 

2F「君は家業に興味あるんか?」
じぇ「今はなんともわかりません」
2F「そうか、よう考えるんやで」
じぇ「たぶん継がないと思います」
2F「そしたら政治家はどうや?」
じぇ「それもよくわからないです」
2F「はは、そうやろな失礼した」

 

ポスターの見た目と違って表情は厳しく、想像の斜め上のだみ声にビビってしまって、親父への報告を怠ってたら

「なんですぐ会社に電話せぇへんねん!」

怒鳴り散らされながら鉄拳制裁です。そんなん来るとも何とも聞いてないのに、家で必殺仕事人の再放送、三味線屋で高利貸しの中条きよしを見て喜んでる猿程度の知能しかない小学生にわかるかいな。

あれが、政治家とはどういう人間なのかを知った最初の機会です。なんせ怖かったですよ。体でかいし。

 

当時、二階氏は建設省(現在の国土交通省)に顔が利く、いわゆる族議員と呼ばれる政治家で、今では信じられないかもしれませんが、当時自民党で頭角を現した小沢一郎氏を仰ぐ派閥の一員でした。

族議員とは、行政を管轄する中央省庁に対する権力を持ち、そのトップである事務次官以下、局長クラスまで、概算段階の予算要求の圧力をかけられる立場の議員を指します。

中央の官僚は地方の実情に必ずしも精通していないため、大蔵省(現在の財務省)との予算折衝を始めるにあたって、地方自治体との太いパイプを持つ国会議員の意見を聞く必要がありました。

さらに国土開発・都市計画・交通政策・防災などに通じた有識者、ブレーンのあらゆる意見を吸い上げ、それらをもとに具体的な施策を練り上げ、積み上げ、大蔵省との折衝を経て国家予算に盛り込ませることで、大きな仕事がひとつ完結します。

要するに、当時の族議員と官僚は持ちつ持たれつであり、官僚は族議員の発言力、ご機嫌を無視することが出来ないのです。族議員が大臣になれば決裁権も人事権も掌握されますから、たまったもんじゃありません。

最近はどうなんでしょうね。官邸主導だのなんだの言葉は踊ってますが、接待やらなんやらが厳しく制限されているご時世ですから、以前よりも疎くなってるんじゃないですかね。

 

地元の道路沿いには、赤いVの字を背景に、うさぎちゃんの顔がデザインされた看板が至る所に立ってましてね。当時の二階氏のトレードマークです。去年の産経のネット記事にも載ってますので参考に貼っておきます。

www.sankei.com

そのトレードマークの横に「高速道路を早く紀南へ!!」「和歌山にミニ新幹線を走らせよう!!」といったスローガンが大書されてました。

 

当時、和歌山県の道路事情は劣悪で、県の南北を走る国道42号線以外に主要道がなく、高速道路も吉備あたりで止まってましたから、週末になると国道の南行き車線が大渋滞を起こし、にっちもさっちも行かないのが常態化していました。そのため、高速道路の延伸は県民の念願でもありました。

二階氏は郷土開発、インフラ整備の必要性を訴えて選挙を勝ち抜き続け、地元民の要望にこたえる形で公共工事を続々と県の中南部に引っ張って、地元の土建業を潤しました。

同時に、JR西日本にどのような圧力をかけたのか分かりませんが、大阪・天王寺が終点だったきのくに線特急を新大阪、京都にまで走らせていた時期がありました。

 

つまり、二階氏を地元視点で見た時、世間とは真逆の評価がなされることになります。彼は地元に約束したことを実現できる=中央から予算を引き出せる、きわめて有能な政治家なのです。

世間では二階氏を親中派売国奴と呼び、国を私物化する奸賊であるという人たちがいます。

確かに、他の地域から見れば、和歌山ばかり贔屓して国民の税金を湯水のごとく使う国会議員など国政に必要ないというでしょう。

ここで政治の原点に立ち返って、果たして政治家の仕事とは何なのかを考えた時、地元誘導もろくにできない人間を国政に送り込むことに有権者は納得するのか?という疑問にぶつかったのです。

国政に携わる人間=国会議員とは、言うまでもなく国を第一に考え、国の発展のために身を粉にして働くのが本来の仕事です。では国の発展とは何でしょうか。まずは部分的でも、自分の出来ること、得意なことから始めるのが順序、というものではないでしょうか。

 

勘違いしてほしくないのは、私は二階氏を擁護したくてこんな長ったらしい記事を書いているのではありません。自民党政党交付金から二階氏に支出した政策活動費約50億円が使途不明というニュースを引き合いに出すまでもなく、カネと政治の問題を体現したような人物でもあります。

しかしながら、政治家をカネ以外に駆動させるものがあるとすれば、いったいそれはなんなのでしょうか。逆の言い方をすれば、カネ以外にないのではないでしょうか。

それが、政治家という職業なのではないか。私が今回明らかにしたいのはそこです。

 

地元の有権者は、カネを引っ張ってくる政治家だからこそ二階氏を選ぶのであり、このたびの後継者選定でも、町村会?どんな組織だそれ?と思わなくもないですが、二階氏の三男を担ぎ上げようとする動きがあります。

www.agara.co.jp

その意図するところは、存命である限り中央に睨みが利く二階氏をバックに、三男を使って国家予算を引っ張ってこさせることです。つまりカネなのです。表のカネ、裏のカネ、全部ひっくるめて裁量権を広く持つために、二階氏の三男を選択する組織があるのです。

外部から見れば全く信じがたい行動かもしれませんが、政治を動かすのは間違いなくカネなのです。

 

高速道路が白浜・すさみまで延伸されてのち、二階氏は政治活動拠点をインフラ整備から観光業に移しました。

www.travelvoice.jp

年頭所感で二階氏は高らかに宣言しています。「観光が明るくなれば、世の中は必ず明るくなります。」一昔前まで観光の位置には土木建設業が入っていました。

なぜ白浜に中国から貸与されたパンダがいるのか、なぜ熊野に外国人が多数訪れるのか、なぜ過疎が進む町村にまで高速道路が伸びたのか。必ずしも和歌山だけを念頭に置いた発言ではないかもしれませんが、符合する点が多数あります。

 

このようなカネのにおいに満ちた、現代の自民党を体現する政治の駆動原理を「金権政治、利権政治」と批判する勢力、主に立憲民主党を中心とする方々にお聞きしたいのは、金権政治と利権政治を否定したうえで、仮に政権交代が果たされたとして、ではどうやって政治を動かすのですか?利権も利益も誘導しない政治家に存在意義はあるのですか?ということです。

私は日本の政治が清廉であってほしいと願うものの、そこまで人間を信頼できるほど若くありません。おそらく、何らかの利権が絡まない限り、もはや日本は前に進むことも後ろへ下がることも出来ないと思っています。

現在の首相は、就任当時から「聞く力」を連呼しています。しかしながら、自民党の政治において声が届くのは、カネが動く場合にほぼ限定されます。政治献金、パーティー券収入の功績が顕著な人物・団体に有利な政治が展開されている以上、つまり「聞く力」とはそういうことなのでしょう。

金権、利権を否定して、本当に政治は前に進むのでしょうか。仮に私一人が納得して、大勢の人、例えば和歌山の町村会のような、地方自治に直結する組織の人々が納得するでしょうか。志、人の思いだけで政治を駆動させる原理になりうるのでしょうか。そんな国は世界広しと言えども北朝鮮以外にないと思ってしまうのですが。

 

地元選出の二階氏を通じて考えたことをつらつら書いてみました。願わくば大勢の人に政治を考えるきっかけとなりますように。