working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

中間層の欲望と憂鬱について

日曜と月曜の夜に続けてメイドインアビス深き魂の黎明(むろんBD)を見る機会を作りました。生命の重み、深淵の掟や営みを音にしたらこうなるのだろう主題曲、奈落へと緩慢にスクロールするアビスの断面図、つぶさには見て取れなくともメートル法記述の深度12,000を超えただけで、目から変な汁が出てきます。私が入手した本作関連アイテムについては何度か記事にしてきたので繰り返しませんが、つくし卿が手掛けたパッケージイラストは旧劇場版エヴァ並みに心象世界と現実が乖離しています。ミーティもプルシュカも、なんて生き生きしてるんだ。

 

テレビシリーズを含む本作の映像パッケージ購入費用は税込42,798円で、原資はほぼ間違いなく政府から一律支給された特別定額給付金10万円です。残りの5万円余りは給与収入と合わせて阪神百貨店のワイン購入に消えたと思われます。お金に名前は書けないので何に使ったのか正確に把握してません。源泉徴収当たり前の世界で税金が帰ってくるなんて、ありがたいおこづかいでしたよ本当に。しかも最近の政治情勢を見ていると、ひょっとするともう一度何らかの支給があるかもしれないなんて、濡れ手で粟とはこのことです。

 

コロナウイルスの蔓延によって就業環境が不安定なパートタイマーと派遣社員と、飲食店をはじめ大打撃を被っている一部の個人事業主を尻目に、一般企業の正社員は給与の一部カットや一時帰休など多少の痛みを伴いながらも、圧倒的に安定した立場から発生するこのような実感を世間に隠して生きているのです。自分たちの不利益を招く発言はしない。当然です。こんなことを聞こえよがしに吹聴したら、なんちゃら警察のリンチに遭って半殺しにされるに違いありません。

 

そんな私どもの実感を熟知している政治家がいたので取り上げます。

 

昨年暮れあたりからのテレビやネットの報道を見ていると、民放及びタブロイド紙とそれらを配信するYahoo!などを中心とする大衆メディアは感染者拡大防止のため緊急事態宣言を再発令せよとの「世論」を形成し、経済を可能な限り回したかったであろう政府は旅行促進・飲食店活性化事業(いわゆるGoToキャンペーン)の中止と「世論」の期待通りに緊急事態宣言を1都3県、のち11都府県に再発令することとなりました。今回はほぼ飲食店のみがターゲットとなり、その後の苦境についてはだいたい皆様がご承知の通りです。

 

そして大衆メディアは夜8時を過ぎて真っ暗になった繁華街を取材し、「すべてのお店が閉まっています」と当たり前のことを視聴者に報告し、さらに「飲食店だけがなぜこんなに苦しめられるのか」とか「ほかにも感染リスクや原因はあるはずだ」とか、一定程度の人の集中が生じる業種全体への不利益の悪平等を唱え、挙句の果てに「こんな緩い緊急事態宣言に意味はない」などと言い始めています。物事の表層ばかり見て適当なこと抜かしてるんじゃないよ。そういう宣言が出るように世論を誘導したのはあんたたちじゃないか。とんだマッチポンプです。

 

緊急事態宣言を待望するかのような報道を繰り返した大衆メディアと、それに先導(あるいは扇動)された人々によって形成された「世論」の裏には、再度の給付金への期待が間違いなく存在します。その期待には2種類あります。本当に困窮している方々の切なる願いと、正社員を中心とする中間層のおこづかい欲求です。そしてどちらも等しく、緊急事態宣言が出れば給付金も出るだろうという、パブロフの犬並みの条件反射的帰結に陥っているために話がややこしくなるのです。

 

だから麻生太郎財務相は、2021年1月19日の閣議終了後の記者会見で言いました。

 

「(全国民へ一律の給付を)するつもりはない」と。

 

これまでのコンテキストを引きずっているとミスリードを招く可能性を含みながらも、さすがの即答です。あらゆる「世論」の可能性をとっくに見越した麻生さんは「中間層は前回のばらまき給付金で好きにしただろう?あんなことはもうやらないよ」と言っているのです。

 

そりゃね?個人的には、私どもにびた一文落ちてこないのは甚だ残念ではありますが、政治家の見識として何ら間違っちゃいないわけです。この発言の「するつもりはない」の部分だけ上手に切り取って「上から目線」だの「庶民の敵」だの、受給目的が大きく異なる2つの層から同時に激烈な批判を受ける事態になっています。衆愚的な狂騒と言わざるを得ません。

 

あ、もしも給付金がもう1回やってきたら、のんのんびよりにゃんぱすぼっくすと宇宙よりも遠い場所のBDボックスを買うつもりです。オタクは経済を回すだけ回して、基礎疾患とコロナを道連れに死んでいくのです。あの世に金は持っていけない。

 

もちろん、私が勤めている会社の業績もコロナの影響で大打撃を被りつつも、心のどこかに安心感があって、毎日在宅勤務も出来ずに繁忙期を過ごしております。僕とっても困ってます!麻生大臣には我々の痛みが分かってない!こんな上級国民、すぐ辞めていただきたい!

 

はぁーあほくさ。