working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

アニメと私(1)

※初回アップ時は約2,600字でしたが、その後の加筆で4,000字を越えました……

 

私は幼少期から小学生までアニメを見て、不毛で有毛の中学生、多感でバカな高校生、享楽と怠惰の大学生の断絶を経て、25を過ぎてから再びアニメに戻ってきました。大人になったら自然とアニメは見なくなるものと思っていたので、大学の同ゼミにアニメが好きな人物(のちの師匠)がいて、まぁそういう人もいるだろう、フッ、私には関係ない話だ……程度に思って以来20数年。アニメはだいたい暮らしの傍らにいる存在になりました。全部師匠が悪い。

 

テレビアニメを拾い見し始めたのが2004年ごろです。社会人3年目、ルーキーイヤーと2年目の激務で15キロ以上落ちた体重は適正水準に戻ったものの心はそう簡単に癒えるものではなく、大阪の北のはずれのワンルーム住宅で向かいのフィリピンパブのカラオケ騒音に悩まされながら、何を目的に生きているのか分からない境遇にありました。

現在も続いている毎日放送アニメシャワー枠で砂ぼうず地獄少女をなんとなく見ていましたが、それだけでは物足りなくなって、そういえば高校生のころ社会現象になってたエヴァンゲリオンってどんな話なんだろう、筑紫哲也NEWS23でコギャルっぽいJKに見せてなんか感想聞いてる企画あったなとか思い出しながら近所のTSUTAYAで第1話から借りて見始めて3日ほどで全話見終わったその足で梅田のヨドバシカメラで同じDVDを全巻+旧劇場版を買いそろえました。

 

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貞本義行書き下ろしの威力たるや

ナディアほどではありませんが、エヴァは何度も見ました。何度見ても綾波レイは可愛いと思いました。テレビ本放送当時の1995年前後はサブカルチャー寄りの社会学者が現れ始めたころで、全く興味も関心もありませんでしたがひとつだけ明確に覚えているのは、社会だの世相だのと結びつけて趣味世界を語るこの人たちは頭おかしいんじゃないか?ということです。

エヴァを何度見ても、社会的、文化的なトレンドを反映しているという意見には賛成できませんでした。なぜそんな読み方をする必要があるのか、十把一絡げに若者の心をつかむなどといわれても、それぞれ好きになった理由はいくらでも考えうる中で、なぜ社会とリンクさせる必要があるのか、心底理解できないのです。シンプルにロボットアニメとして面白い、謎めいた話と心の問題に切り込んでいく手法が面白い、それ以上の何かを深読みする心が私にはなかっただけなのかどうなのか。

私がエヴァを見た2005年ごろと、1995年から96年にかけてリアルタイムでエヴァを見た人の間に10年の断絶があり、私が世相を把握していないだけなのかも知れないと思い、東浩紀さんやら宇野常寛さんやらその筋の本は後追いながら読みましたですよ。動物化するポストモダンからゲーム的リアリズムの誕生ゼロ年代の想像力、なんか他にも読んだな、岡田斗司夫さんとか中森明夫さんとか大塚英志さんとか。

それでようやくほんの少しわかったのは、流行には理由があり、その理由が流行に乗った当人たちには見えないから、小難しい事を考える人たちが、万人とは言わないまでも彼ら以下の知的階層に相応の理由を与えてくれる、それだけのことに過ぎないんだなと。社会に影響を与える作品が、社会から影響を受けないはずがない、その時鏡になったのがたまたまアニメであり、たまたまエヴァだったのだと。じゃこの人たちは月9のトレンディドラマを題材に立論するのか。するわけがない。関心がないから。社会を動かし、人の心を捉えることやものには理由や構造があるというならば、当時のトレンディドラマにこそ圧倒的な動員力があったと考えるのが自然なのに、そうしなかった。それはつまり、自分の「好き」をどう社会にコミットさせうるかという言葉遊びの一環ではないのか?それらしいワードを持ち出して少数派を鼓舞するだけの小難しい檄文に過ぎないのではないか?と思うんですわ。エヴァを見ている君たちこそが真に社会を前進させるのだ的な。んなわけあるか。

高校の教室にもひとり、アニメに興味はなくとも尖った話題が好きそうな女の子がいましてね。一枚皮をはいだらただのめんどくさいメンヘラなんですが、割と見た目が良かったからなんとなく話を聞いてました。あわよくば一回くらいヤれるんちゃうかなとか思ってました。宮台真司だの上野千鶴子だの、「社会学」といういまいち何を学問領域として扱っているのかよく分からない人たちの名前を出して衒学的な会話に引き込もうと躍起になってました。奇矯な言動が目立ちすぎて2年の途中からキワモノ扱いでしたが。あとこの子のパンチラはしょっちゅう見た。凝視した。あれは見せてたんやな。メンヘラのやることは分からん。あの子が早稲田に進学してからも時々会ってたけど結局1回もヤれなかった。

んで、これは時代の徒花みたいなもので、さすがに今は姿を消しただろうと思ってたら、宮台真司さんはいまだに似たようなこと言ってるようです。有料記事なのでさぞかしためになることが書いてあるのだろうと思います。私は絶対買いません。

mainichi.jp

 

世が世なら鬼滅の刃並みに国民の関心を引きつけるビッグコンテンツ……になり得た作品(※)だったかどうかはともかく、前述の通りエヴァが普通のアニメではなくオタクコンテンツ化してゆく過程には、論理的根拠を伴おうが伴わまいが、ソーカル的えせポストモダン武装が施され、これまた理解が伴っているのか定かでない屁理屈が大好きな口達者の連中が跋扈し、彼らによって私物化された空気をまとったことにより制作者の意図せざる形で作品の敷居が高くなり、作品にふれる可能性のあったノーマルな人々の間口を狭めたことは間違いありません。この状況をもたらした言論人の罪は相当重い。

それは庵野秀明さんが望んだこととは程遠く、ただ、テレビのエヴァがあのような終わり方をしたために世の憶測と、自らに向けられた得体の知れない憎悪を生んだことへの居たたまれなさと同時に怒りもあったのではないかと推測するのです。完全な決着を図ったはずの旧劇場版で客席を映しつつ、製作者が関与しないちんぷんかんぷんの理論体系の海におぼれて悦に入る人たちに「気持ちいいの?」って言いたくもなるでしょうよ。

もう一度考えてみたいのは、エヴァは難解か?という点です。これまでもあらゆる機会を通じて言ってきましたが、旧劇場版で十分な決着が図られたと私は思っています。確かに難解な部分は多数ありました。しかし物語の本筋を理解する上でそれらの理解は必須ではありません。だって、分からなかったことはだいたい附属の解説書に書いてあったから。シンジ君は傷ついてもいいから他者のいる世界を選びました。その結果人類補完計画は中断されました。LCLになっちゃった人達はヒトの境界を取り戻し、ちょうどエントリープラグで霧散したシンジ君の肉体が戻ったように戻ってくるのでしょう。他者の存在を証明するのがアスカちゃんの「気持ち悪い」です。そしてその選択をうじうじ悩み続け、自分に好意を向けてくれないアスカちゃんの首を絞める行動になるわけですよ。ただ、それを理解するには当時の人々ののめり込み具合がキツすぎた。

そんな、論評の姿をしたあらゆるしがらみを振り切ってもう一度作り直そうとしたのが新劇場版であり、エヴァをオタクの手から取り戻すという試みは概ね(そう、概ねです。オタクを排斥したわけではないところがポイントです)達成され、パチンコとパチスロの爆発的ヒットもあってファンの裾野が広がり、この2月に見事完結した話は過去に書きました。よかったらこちらもどうぞ……クリック稼いでも私には一銭も入りませんが。

working-report2.hatenablog.com

 

ちょっと性質は異なりますけど、私いまだに言われますもの。

「gentlyさんみたいな人のこと、オタクってゆうんでしょ?そしたらあの青?赤?知らんけどロボットのやつ、ガンダム?なんかな、めっちゃ難しそうなんやろあれ?略してエバってゆうんやろ?ふーんやっぱりそうなんやぁ意味わからへんわぁきっもぉ」

大してアニメに興味のないクソドブス女性たちの感覚はこんなもんです。エヴァはこの人たちにとってガンダムと区別しがたい、そして当然ながらディズニーやジブリとは違う、変な男の人たちが見るわけのわからないまんが映画程度の認識なのです。大いに結構です。生涯そのままでいてください。だって、大体それで合ってるから。

 

興行収入総計
 鬼滅の刃無限列車編 約517億円
 出典:

times.abema.tv


 シン・エヴァンゲリオン劇場版 約102億円
 出典:

www.oricon.co.jp

 なお、上記に序・破・Qの3作を合わせても煉獄さんに歯が立ちません。そして私は鬼滅の刃を見る気がありません。

 

その後、性的な願望から相変わらず抜け出せない私の関心は綾波レイから惣流・アスカ・ラングレーへ移り、そこには間違いなくパチンコ・パチスロのチャンス度合いに比例する心変わりもあり、その筋で行くとカヲル君が大好きということになるのですがそういうことではなく、この頃私が使っていた携帯電話はシャープ製の朱色に近い鮮やかなボディでした。もちろん待ち受け画面はアスカちゃんでした。笑顔より怒った顔が刺激的なアスカちゃん。家族割が利くからとNTTのまとめてプランに加入させられていましたが、このことは一方で携帯代を実家に負担させていたということでもあります。ある時期からそれが社会人として猛烈に恥ずかしい気分になり、実家に解約を申し入れ、当時格安プランが売りだったソフトバンクに乗り換えた直後でした。ええ、大して安くならんかったですよ。

 

新劇場版の序、続く破に至って「翼をください」を聴きながら、ついにエヴァンゲリオンはオタクコンテンツの殻を捨てて一般的なアニメコンテンツへと昇華した、そしてサードインパクトが始まるのよという話に続いてゆくのですがいったんここまで。エヴァの話は何万字費やしても終わる気がしませんね。今回のテーマは私のアニメ遍歴なのでだいぶ長くなります。