working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

映画館のナディア

アニメを見て人生観が変わったという話を時々聞きます。そんな話を聞くたび、口には出しませんが言い過ぎだと思います。人生観ってそもそもなんなんでしょう。学生、社会人を経て蓄積された経験から「生きるとはこういうことだ」とか、「こうなるためにこう生きる」とか、その通りにしてもしなくてもいいようなもの、また決めたところでその通りに出来るとは限らないもの程度に思っていて、限りある時間の中でそれなりに、無自覚的に変化していくもので、あくまで共感、感動の誇大表現に過ぎないのではないかと。

私はアニメで深く感動したこと、それによって勇気づけられたり励まされたりしたことは何度かありますが、考え方を変えたり、心を入れ替えたりといった、直接的な変化を自覚した作品に出会ったことはありません。ふしぎの海のナディアを除いて。

 

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興奮のあまり手ブレがひどい

ナディアは私の人生観、価値観に大きく作用した唯一の作品です。なぜか。坊やだったからさ。毎週金曜日19時半のNHKが楽しみすぎて頭おかしくなりそうだったあの頃、私は小学5年生でした。人格形成期に見たアニメの精神支配力は圧倒的で、初回放送から30年以上経た現在も変わりません。相変わらずナディアは気難しいけど可愛いし、ネモ船長のカッコよさには男が男に惚れるのもやむを得ないと思いますし、ガーゴイルの冷徹非情さには男が男に惚れるのもやむを得ないと思いますし、エレクトラさんの感情がブレイズする22話を見るたび涙しては永遠の17歳教に帰依します。

そんなナディアを超絶音響と巨大スクリーンで見る贅沢を味わった日曜は最高の休日でした。今月18日まで、尼崎の塚口サンサン劇場で2回に分けてセレクト上映が行われています。同館の音響調整にはテレビアニメ作品のスタッフクレジットでよくお見かけする有名音響監督さんが携わっておられるそうで、その破壊力(音が大きいのではなく臨場感)はテレビスピーカと比較になりません。

前半は1・8・16・21・22話、後半は35話以降39話までぶっ通しです。話数だけでどんな話だったか全部思い出せるのは「普通ではない」とつい最近指摘されましたが、人生観を形作った作品ならそれくらいは。私は全話大脳に彫り込まれているのでなんの問題もありませんでしたが、初見の方はどうだったんでしょう。これを機に全話見てみようと思った方は、どうぞ全話ご覧ください。そのあと、どうやって未見の人にお勧めするか考えてみてください。おそらくサンサン劇場のチョイスに落ち着くと思います。いや俺ならあのエピソードを入れるねとか、みんなで話すのもきっと楽しいでしょう。

映画館で見るナディアには、テレビで通しで100回以上見たはずなのに、新しい感動があり、興奮がありました。劇中はたして何度涙したことか。しばらく地に足がつかない、心と体が分離した感覚になったのも久しぶりでした。ナディアは人生観を変えるどころか、破壊して一から作り直します。不惑を過ぎて改めてこう思います、庵野さん樋口さんは罪深い。その罪深さゆえに心から尊敬します。

ナディアへのあくなき果てなき恋心について今年の春頃に書きました。よろしければあわせてご覧ください。毒にも薬にもならんことが書いてあります。

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本日はここまで。毎度これくらいの長さに出来たらいいのに。