working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

東京都知事選2024 遅めの感想

皆様こんにちは。東京都知事選って、良くも悪くも内外の耳目を集める一大イベントですね。泡沫候補の大量擁立、ポスター掲示板の枠販売、ほぼ裸の女性ポスター、コントみたいな政見放送等々、主に立花孝志氏が率いるNHKから国民を守る党(以下、NHK党)による、選挙公営の低級娯楽化が「異常」「史上最悪」といった、強い否定のニュアンスで語られることが多かったように思います。

ただ、選挙戦そのものは大きな波乱もなく、現職が2位以下に大差をつけて勝利しました。投票率は60パーセントを超え、平成以降では2番目の高さでしたので、有権者の関心は相当高かったと言えるでしょう。それでも4割近くが投票してないんだから困ったものだ。

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2位との票差が160万票です。選挙後の報道では2位候補に対して善戦、健闘などの評価が見受けられますが、冷静に見れば「勝負にもならなかった」というのが実態です。

 

それでも、この選挙には意味がありました。2位候補は広島県自治体首長を経ての立候補、地盤も看板もないにもかかわらず、選挙戦序盤の劣勢を跳ね返す追い上げを見せたと言われています。

知名度と支持率を爆発的に高めたのはSNSを駆使した情報戦という分析も見られますが、それより大きかったのはやはり、与野党を含む既成政党への強大な不信感でしょう。私が有権者ならどちらにも入れたくないですもの。

3位候補はせいぜい念入りに自己分析していただいて、なぜ見ず知らずの人間に理不尽なほど嫌われているのか、ご自身の洞察を深めていただかないと話になりません。支持者の方々にも、なぜこうも民意の大勢と意見が食い違ってしまったのか、冷静な分析をお願いしたいところです。

 

問題はここからです。当該選挙が終了してから、公務開始のニュース以外現職について報道が全く触れなくなったのに、なぜか連日2位候補の言動が注目され、ネットニュースではその名前を見ない日はありません。これはちょっと異常だと思います。

それらの大半は閲覧数稼ぎのような、良くも悪くも2位候補の言動を取り上げた記事ですが、結果的にメディアは知名度を上げるお手伝いをしている格好です。

もとよりメディア、特にインターネットメディアには節操も理念も求めていないので、そういうもんかもしれないな、とも思うのですが、私が日ごろ触れているNHK(テレビ)や日経(新聞)が一切取り上げないのに、それ以外の狂騒ぶりは、NHK党の下品なパフォーマンスの比ではない異常さを感じます。

 

2位候補の何がそんなに人を引きつけ、話題たらしめるのか、私には理解できません。彼の言動をテレビで瞥見する限り、何も伝わってこないからです。確かに理論派、頭脳派のような喋り方をしますが、彼の話には中身がありません。政策レベルの話に至っては3位候補のよく分からない公約よりも意味不明な詭弁を弄しています。やりたいことが明確ではないのです。

……その点、やり方が正しいかどうか、持続可能な社会を構築できるかどうかは別として、以前書いた二階俊博氏の政策的思考は明確です。政治の駆動原理はカネである、派閥がなければ何もできない、カネがなければ人は動かない、と先週日曜のNHKスペシャルで明言しました。

私はこれへの反論を準備できてません。残念ながら、その通りだなと言わざるを得ないから。

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現職知事は神宮外苑の再開発計画等の大型公共事業に関連して、三井不動産との政財癒着が疑われています。確かにそこからはカネのにおいがします。

しかし、カネなくして動かないという先の政治駆動原理に従えば、そうでもしないと期待通りに動かないのでしょう。そこにいかほどの金権、利権が埋まっているのかはなんとも言えませんが。

これがたとえば、完全に公正な入札で、何ら面識のない者同士が共同事業体を組んで、失敗が許されない大規模事業が果たして順調に進行するかという話になってくると、事業者側も自治体側も、担当者は恐ろしく不安で夜も眠れないに違いありません。

何らかの根回し、事前準備が必ず必要になり、そのシーンで見える、見えざるカネが動くこともあるのだろうと私は思います。違法にならない範囲で、カネの潤滑油的機能は必要だと思います。

 

……そんな、ある種の生臭さを伴うような話は一切せず、利権、金権で動く政治を「政治屋」として切捨て、そんなことをしなくても政治を前に進めるのだ、という主張をされる人を見る時、識者に限らず大勢の有権者が疑いの目を向けるのは当然です。2位候補はその声に有効な回答を示していない、私の疑問を溶かしてくれない。

彼はいずれ国政を見据えて活動を始めるでしょう。自他のコラボレーションで知名度も十分上昇しました。その時有権者に向かって何を語るのか、相変わらず具体性を伴わない理想論とも妄想とも捉えられそうな話をするのか、私は注目しています。

なお、先の政治駆動原理について、二階氏は最後に「これは古い政治だ」と言っていました。自身が世間からどう思われているか、ちゃんと自覚はあるようです。

新しい政治は何のことなのかを示すのが政治家の役割です。それを果たさない人という意味では、2位も3位も大差ないな、というのが私の感想です。