working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

誤解されているワイン

皆様こんにちは。私、これまでも度々書いてきましたけど、ワイン飲むんです。

左端のキャンティクラシコはおいちいちゅきちゅき

うちにもね、そんなに高いのはないですけど、それなりにストックしてあります。でも「ワイン飲みます」言うだけで、いろんな人から軽蔑されるんです。なぜなんでしょう。

 

タク「新地でっか、景気よろしおまんな」
じぇ「知り合いのワインバー行くんです」
タク「ワインなんぞ男の飲むもんちゃう」

 

初対面の客に何抜かしとんねんおっさん。

ゆうたとこまで黙って機嫌よう運べや。

 

女子「gentlyさんの好きなお酒なんですか~?」
じぇ「お酒はきついの以外だいたい好きですよ」
女子「じゃ~最近好きなの教えてくださいよ~」
じぇ「う~ん、ソーヴィニヨン・ブランかなぁ」
女子「え~なんですかそれ~はじめて聞いた~」
じぇ「白ワインのブドウ品種でおいしいですよ」
女子「は?ワイン?そんなガラちゃうでしょ?」

 

おまえ今日会うたとこやろがい?

ワイの何しっとんねんな?

 

どいつもこいつも会話の初っ端からひどくないですか。ワインというだけで相手の失言スイッチを全開にするなんて、おかしくないですか。

 

じぇ「いやいやおいしいのはちゃんとおいしいでっせ」
タク「女の腐ったようなんがカッコつけとりまんがな」
じぇ「そういうのもおるけど別にワインは悪ないやろ」
タク「男は黙って焼酎湯割りで飲んだらよろしいねや」

 

初老を過ぎたタク運転士は、「女の腐ったようなん」、ご時世的に非常に問題のある言い方をしたくなるほどキッショい野郎を乗せたんでしょう。頭カラッポでも卑猥なことだけ上手なオネーチャン相手にペラペラしゃべってる講釈垂れが目に浮かぶようだ。あの手合いは内容が正確でも耳が腐るほど不愉快になるのはよく分かる。

……こういう奴がいるからワインは日本の硬派な男性に受け入れられないんです。ワインが悪いんじゃありません、ワインを得意げに語る男の総合品質が劇的に低いのです。阪神タイガースを得意げに語るファンの総合品質が劇的に低いのと同じです。

 

じぇ「いや、うちにワインあるし、阪神で買うし、セラーもあるし」
女子「じゃなんで今日頼まないんですか?ワイン好きなんでしょ?」
じぇ「管理とか信頼できるお店以外では飲まないようにしてるんで」
女子「はぁ~出た出たワインのこだわり、あ~そうですかはいはい」

 

こんな失礼な女は酔っ払ってるとはいえ正拳一発ぶん殴ってもいいと思います。私は紳士なので怒髪衝天の感情を静かに抑え込みながら

 

じぇ「バカにしてるな~ぷぅ~!今度うちに飲みにおいで~な」
女子「やだやだワインエサに女の子何人泣かせてきたんかな~」

 

……この頃を境に合コンで男が多く払う傾斜配点を断るようになったので誰にも誘われなくなりました。下心がなかったとは言わないですけど、ワイン好き男子の相対的地位が低すぎると思いませんか。

 

女子「ワイン飲む人って産地とか当てるんでしょ?」
じぇ「単一品種は分かるけど産地は分かんないです」
女子「それでワイン好きとか言っていいんですか?」

 

そのくせワイン好きを公言する人間に求める能力が過大という理不尽。なんなんこの人ら。私の発言は多少気色悪く見えるよう脚色していますが、女の発言はほぼそのままでお届けしています。

かんたんでとてもためになるあとかわいい

私のワイン知識は大したことないです。多少勉強したと言えばワイン1年生を通読したくらいです。この本めっちゃ面白いのでおすすめです。社長にも貸しました。

金葡萄のバッジをつけたソムリエみたいに、原産国・地域の風土やら味の特徴やらを吟遊詩人みたいに語れはしませんけど、それがだいたいどの辺で、その葡萄を使ったらどういう味になるのかぐらいは知ってます。

 

ここからは私の仮説です。平民クラスのワイン好きの地位が低いのは、その辺の居酒屋とか、なんか気取った男女が居座ってるワインバーで飲んでる人の大半が、ワインの味なんて実は全然わかってなくて、アルコール度数の高さを利用して女の子を酔わせてその後どうにかするツール程度にしか思われてないからなんじゃないか。

 

あと、ホストやホステスのクラブやらガールズバーやらで意味わからんほど高いオーパスワンあるじゃないですか。あれって要するに「私は飲み歩きでこんなにカネ使えるんだぜ!」を見せびらかすことで、自分は金持ちですよ、あるいは店のオニーチャンオネーチャンへの誠意ですよってのをアピールするツールに成り下がってしまってるんです。

余談ながら、このような見せびらかし(衒示的)消費についてはアメリカのヴェブレンって人が「有閑階級の理論」という本を書いてます。人間は業が深い。

そこにはカリフォルニアワインの味わい深さとか、日当たりのいいナパ・バレーの特定の一角で育った美味しい葡萄とか、味を楽しむ余地はありません。ただのファッションです。値段こそ正義。

ワインとはそういうものだという誤った文化が、この国には根付いてしまったのです。とても悲しいことです。ホス狂いの女はどうしようもない借金をこしらえてフーゾクに転落するのですが、それはまた別のお話。

 

……社会的地位の高い人たちの間で飲まれるワインは高級過ぎて逆に味が分からないというか、飲み慣れないので自分の中でどう評価していいか分からないというのも、ワインが浸透する障壁になっています。プリンスホテル勤務のソムリエさんはとても親切で、こんなことを教えてくれました。

 

「gentlyさんはおいしそうにワインを飲まれますね。職業柄、私はお客さまに嫌味のないよう説明をしないといけないので、うんちくめいたことを申し上げないのですが、味についてご友人に何かをお伝えしたい場合は、ワインのお値段を気にせずなにか1本を継続的に飲まれるのをお勧めします。そうすることで味のベースになる舌が出来上がります。別のワインを飲んだ機会に、普段飲んでいるあの味と比べてどうかを意識すれば、言葉のバリエーションを気にすることなくお話が弾みますよ。これからもワインの楽しみを広げていってください」

 

ええソムリエさんに会うた。ワインって、金持ちだけが飲むもんじゃないんですよ。成金趣味的な憧れで飲んでるわけじゃなくて、おいしいと思って飲んでるのに、これが平民になると途方もなくイメージが悪い。

世間の評価がああなので、私はごく親しい人間以外にワインの話をしなくなりました。傷つくんですよ、上記2例のような反応をされると。皆様の周りでも嫌な思いをされている方がいるかも知れません。私はその人を応援しますよ。