working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

天蓋の果ての果て

皆様こんにちは。唐突に昔話を始めるときはネタが熟してない時だと思ってください。アニメの視聴は頑張ってますのでそのうちなんか書くと思います。

 

40年以上生きていると色々な経験をします。中でも笑いのネタになるのは風俗店で出会った嬢との店外交渉です。連絡先を知りたがる彼女たちは、サービスが終わったら例外なく「金貸して」に行きつきます。

体売ってるくらいなので当然カネに困ってるんだろうことは容易に想像がつくんですけど、私が交渉してきた相手は型にハマったみたいに全員がホス狂いでした。

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ちなみに店外交渉の問題点はこちらの弁護士先生が分かりやすく整理してくれてますので貼っときます。主に相手をする女性側の視点で書かれていますが、男性側が負うリスクについてもご尤もな内容です。食事して追加の支払もなくホテルへGO!を繰り返した私はある意味ラッキーだったんでしょう。その先にカネの問題があるだけの自由恋愛です。

ホス狂いとは字義のとおり、狂ったようにホストに貢ぎ尽くす客のことです。ホストクラブでは客の信用状態を確認することなく、高額なお酒やフルーツ等を注文させ、一旦ホストがお店に立替払いします。すると、客の信用状態をはるかに上回る金額を立替える事態が起こりえます。ほとんどの客には支払能力がないので、立替払いしたホストはその取り立てのために客を高収入の仕事=風俗の沼に沈めるって寸法です。

この実質的な「売掛」を問題視して、最近は風営法等の改正を唱える国会議員も出てきました。

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塩村さんは他の仕事しない議員に比べたら遥かに立派な意志をお持ちなので、実現するなら大いに頑張っていただきたいのですが、果たして法改正で対応できるんでしょうか。

カネの流れが売掛と別の形をとるようになればいくらでも抜け道はあるような気がしますし、結局ホストにハマる客の本質的な問題は、金銭感覚が失われるほどの遊興に対する恐怖心がないことです。それなりの家庭は幼いころからきっちり教えるでしょう。理性が働く子はああいうものを遠ざけます。人間の心理の根源、愛されたいとか褒められたいとか夢見たいとか恋したいとか、ふわふわしたものにまつわる限り、この問題は永遠に解決しないと思います。

そういう、理性が働かないほどズブズブにされてしまう子たちの問題を、理性が働く側の人がどこまで掬い上げられるんでしょう。マインドコントロールは誰でも陥る可能性のある問題ですが、本当にそうなのか?人生の序盤のしつけの問題じゃないのか?と私なんかは思ってしまいます。

 

……さて、店外交渉の場では言い出さない嬢もいるので、LINEアカウントの交換を申し出られることがあります。私のほうは毎度バイネームなのに、嬢は偽名というか、名前ですらないです。本当に、社会人生命が終了するレベルでしくじったと思います。個人情報筒抜けすぎる。その代償としての笑い話が安すぎるほどに。

LINEの記録に残っているのは少ないものの、店外交渉はそれなりにしました。店に知られずに会うだけといえばまぁそうなんですけど、会っている間は一切の行為を許さなかった嬢もいましたし、父親知らずの4歳の娘がいるママから結婚を申し出られたこともありました。

免許証まで見せて偽りなさをアピールする嬢、2日前から何も食べてないと泣きながら窮状を訴える嬢、あたり構わず吠えまくるバカチワワを他の嬢に押し付けられて自分の食費を削ってる嬢、前の家に同居を申し出た嬢、純粋にカネ目当ての嬢、いろいろいました。♪人生いろいろ、イロイロ!かの嬢たちは乱れ狂い咲いてました。

自由恋愛自由恋愛。まぁ取っ掛かりが何にせよ、何回でも言うけど全部、カネの問題を避けて通れないんだけど。

 

記録に残っている中では、交渉から数日後くらいにこんな内容が来ました。

私がよっぽどいい人そうに見えたのか(いい人は店外交渉なんてしないと思うんだが)、いきなり20万円です。速攻断ってますので話はこれ以上進展しませんでしたが、きれいにケタ揃いで要求されるときはその10倍の借金があるだろうと私は思ってます。本当に20万が必要なら一定の客を相手すれば時間の問題です。店の差配の問題もあるでしょうけど。

そしてこれも例外なく、金の切れ目は縁の切れ目です。私がキャッシュディスペンサー機能を果たさないと悟った瞬間からアカウントは死にます。彼女たちは手管が長けている。バイネームで流れてった私の個人情報どうなったんやろ。どっかでおんなじように晒されてるんやろか。

 

中にはしつこいのもいます。あまりにしつこいのでブロックしてしまうほどの。このアカウントはいまだに生きてるんだよなぁ。断ってるのに話だけでも聞けというので応じたら

あっせん業者かお前は。お友達を風俗沼に沈める手伝いをしろと。しかもワイン飲ませろと。何様や。

「今回も」とあるように、前回のお願いは「今すぐ4万欲しいので何とかならないか」というストレートすぎるカネの無心でした。もちろん断りましたよ?それがないと今すぐ店を辞めないといけないとか何とか言ってました。店のカネちょろまかしたんかな。

この後もくだくだと理屈を並べて、交渉のテーブルに着かせよう、もう借りられるならいくらでも!って勢いで突っ込んでくる上に、

借りたいという子の写真まで晒す必死さ。私のリプライに対する既読も、その返信も異様に速い。自動生成AIかよって思うくらい。

代理人として非常に優秀で粘り強いのは認めましょう。でもね、私は見た目が知りたかったんじゃなくて、何でそんなことになったのかちゃんと話せってつもりで聞いたんですけど、文脈って難しいですね。写真なんか知らんおっさんに晒したらあかん。どんなに加工まみれでもあかん。

初回、この嬢を相手にしたとき不覚にもワインとか開けちゃったのがまずかった。呼んだのが前の家でよかった。今の家だったら屈強なお兄さんに押し入られてたかもしれん。写真を見てちょっと心が動いたのは悔しいながら認めざるを得ない。

 

彼女たちに借金が出来てしまった事情を詳しく語るパターンはほとんどありません。だって、ホス狂いがバレたらとことん金銭感覚が死んでますと公表するに等しいんですから。でも、担保も何もない、体売る以外に選択肢のない若い娘に莫大な借金が出来る原因は、残念ながらホス狂いしかないんだよなぁ。

親族の病気の治療とか、手術とか、それっぽい理由を言う嬢もいましたけど、すでに無担保で与信枠をはるかに超えて借金が出来てるならそこから借りればいいのになぜ進んで多重債務者になろうとするのか、もう返すアテおまへんがな!って突っ込まざるを得ません。決まった勤め先もないでしょうから消費者金融すら聞く耳を持ちません。結果、太客っぽい誰かに頼まざるを得ない。

 

……確かに、こういう子達をこれ以上増やさないように対策を考えるのは大事かもしれませんけど、問題の根幹は人間の欲求、性欲もさることながら、ホストにかけてもらう甘い言葉に含まれる承認欲求、満足感など不確定な感情的要素に起因することなので、立法の限界を思わずにはいられません。

商業としてホストクラブを見ると、確かに歪です。ふつう、掛け売りをする相手には一定の信用が求められます。代金を支払うあてのない客にモノを売ったりしません。ところがホストはどんどんやる。支払能力をはるかに超えてモノを、サービスを売る。こんなのは商売とは言いません。

何が言いたいかって、巨額の借金は信用がないと出来ないのです。信用なくできる借金なんて、ホスト以外にないのです。その入口に立っている子達を本当の意味で救済するには、ちゃんと教える人が必要なんじゃないですか。

 

ホス狂いといえばかれこれ10年以上前、甲子園で母校の試合を見終えた後に心地よい疲労感と共に阪神電車に乗って、つり革にぶら下がっていると聞こえてきた、向かいの席の子たちの会話を思い出します。

「あんなぁ、うち妊娠してん」
「エェー!おめでとう、なんかな?」
「お医者さんで3か月やって言われたわぁ」
「そうなんやぁ、相手どこの人なん?」
「ミナミでホストやってんねん」
「え?」
「まだ見習いで店にいっぱい借金あんねんけどなぁ、ホス狂いの友達に聞いたら『あんなええホストはおらん』ってゆってたから間違いないわぁ」
「待って、ちょっと待って、あんたどこ行くの」
「梅田」
「今から行くとこの話ちゃうやん、どうすんのこれから」
「えぇ、赤ちゃんできたら結婚するやろぉ?」
「せやな、普通はせやな」
「おととい電話でなぁ、出来ちゃったってゆってん」
「おう、ほしたら?」
「『よかったなぁ、がんばろな!』てゆってくれてん」
「他に言うことある気すんねんけどないの他になんか」
「『おう、俺来たやん?大丈夫?体冷やすなよ?』ってすぐ来てくれてん」
「うん他には?他にはないんか?」
「すぐ来てくれてなぁ、体冷やしたらあかんからってええおふとん買ってきてくれたんやでぇ?めっちゃ優しない?」
「ちゃうやん、あんた一人暮らしやん?これからどうするとか親とか何の話もしてないん?」
「そんなんまだええやろ」
「相手の人もさ、借金?どれくらいあるとかさ、親が面倒みれるとかどうとかそういうのないの」
「毎日『大丈夫?元気?』て電話してくれんねんで?嬉しいわぁ」
「あんたええの?それでええの?」
「なんか彼も考え直してなぁ、もうホストやめるってゆってんねん」
「え?生活は?ホストやめてすぐ仕事あんの?待って、待ってめちゃくちゃやん」
ハローワーク行ってすぐ探すってゆってくれてるし大丈夫やって」
「ホストやめて何できんの、ホスト以外に何できんの、借金あるし」
「来週一緒に家探してくれるんやってぇ」
「ホストやめたら無職やん?あんたも無職やん?無職に家貸してくれると思う?」
「そしたら私も働くよぉ」
「それこそ体冷やすやん?産むの?ほんまに産むの?その前に結婚すんの?」
「産まへんかったら……どうすんの?」

尼崎で乗り換えるのをうっかり忘れるほどのすごい会話を前にしてしばらく硬直して聞く耳立ててました。もし順調にことが運んだなら、その時生まれた子供は小学校の高学年くらいです。

 

人のことを悪く言えるほど立派な人生を歩んでいるわけではない私は、ただただ、おカネのありがたみをスルメのようにかみしめるばかりです。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。