working-report 2回戦

ゲーム脳はゲーム脳のままで熱を失うだけ

ラノベと私

皆様こんにちは。新作のライトノベル(以下、ラノベ)を読まなくなって久しくなりました。7年くらいご縁がありません。

こうなる以前は電撃文庫の新刊発売日には職場近くのアニメイトへ立ち寄ってまとめ買いしていたものですが、緑内障の進行とともに活字が見えづらくなり、また自宅の一室が本で埋まってしまうほどの量を持っていたので、引越しついでにその大半を売却処分しました。1,000冊以上あったのに二束三文でした。

 

私がラノベをガツガツ読んでいたのは20代中ごろから30代後半にかけてです。当時流行だった涼宮ハルヒの憂鬱に夢中でした。もっともターゲットになりやすいはずの10代~20代前半は遠藤周作とか太宰治とか芥川龍之介とかを読んでたからか、こんなに読みやすい小説もあるのかと貪るように読んでました。

以後、お風呂読書と言えばラノベになりました。毎日90分くらい、湯船に浸かって、時折外に出て(家の外ではなく風呂の外ね)、水を飲んで、また浸かりながら読んでました。1分2ページのペースで1冊の3分の2くらい読めるのです。デトックスも同時進行できて一石二鳥。あの頃は今よりはるかに痩せていた。

さほど本が好きというわけでもなく、純文学ばかり読んで文庫本プライスで作家さんの創造性に触れるのがお手軽で楽しかったので読み続けられたのでしょう。新刊書、ハードカバー小説の金額にはどうしても抵抗感がありました。それに世間で小説家として認知されている作家さんの本とラノベの違いは挿絵の有無程度じゃないのと思ってました。……思ってたというか、実際そうなんじゃないの?

 

今も手元に残しているラノベはこれだけです。

アニメも凄かったけど

TYPE-MOONのゲームをやったことはありませんが第四次聖杯戦争を描いたFate/Zeroは時々読み返します。虚淵玄さんはすごいですよ。文体に厚みを通り越して圧迫感を覚えます。これが元々エロゲなんて信じられるか。というかそもそもこれはラノベなのか。

三浦理恵子さんの演技よかった

R.O.D小説版は完結していません。既刊の文庫本の小口が茶色に変色してます。倉田英之さんは気分屋なのか、仕事のクオリティに差があります。もうどんな話だったか忘れたので今第3巻を読み直してます。これがね、マジで全然覚えてないの。

ゲーセン50円は遠い昔

川上稔さんの著書で文体的にも本の厚み的にも唯一と言っていいほど読みやすくて持っている連射王上下巻。ゲーセンに行く文化が私にはなく、地域の教育委員会はゲーセン通いを禁止していたので実感は伴いませんが、ハイスコアガールに通じる甘酸っぱさがあって好きです。

30年くらい前の小説再出版

現状6巻までしか刊行が確認されていないザ・サード完全版。読んでいると口の中がザリザリするような砂っぽさがあります。2段組みの縦長い本って最近見ないですね。大変持ちにくいし、市販のブックカバーが合いません。続きがありそうなんですけど、ないなぁなんでかなぁ。星野先生は続きを書かないんだろうか。

 

今でもラノベが深く認知されていない世の中では、どこかラノベを軽視する向きがあるじゃないですか。私はこれが我慢ならないんですよ。

習慣的に活字に接しない人が、ラノベを好んで読む人を見下すような態度をとるとき、私は鼻で笑っちゃうんです。だって、そいつより間違いなく、ラノベ愛読者のほうが語彙力も読解力も人間の心の機微にも聡いじゃないですか。本人の資質はともかく。

誰かの好きなものを馬鹿にする人間は、自分の中に誇れるものを何ほども持っていません。分野は異なれど誇れる何かを心の中に持っている人は相手を尊重します。本心でどう思っているかはともかく。それが教養というものです。建前って言う方が正確なんですけどね。面前で馬鹿にする人は自分の為した行為の恥ずかしさに気づけない、残念な人なのです。本音で接する素直な人の可能性もありますけどまぁだいたいクズですわ

 

ラノベは決してただの読みやすい、底の浅い絵付きの本ではありません。ただ、私が結局ほとんどラノベを読まなくなった理由は、身体的な事情もさることながら、ラノベの本質ともいえるキャラクターの行動を軸に描写を進めていく展開、それに伴って生じる読みやすさ、物語の単純明快さに飽きたからです。

最初、私が感受性を失った、精神的に老いたのかと思っていましたが、プリキュアを見ていると3話に1回の割合で泣いてる自分が老成したなんて到底信じられず、そうか、これは老いのせいではなく、あらゆる読書経験を通じて視野が広がり、その視野を持ちえない作家さんの思想や世界観に共感できなくなったからなのだろうと思うようになりました。

逆の言い方をすると、今でも読み続けるラノベにはそういう飽きが来ていない、ということになります。R.O.Dは若干しんどいけどちゃんと完結まで見届けたいな。TVアニメともOVAとも全然違う話だし。

 

ラノベはピンキリです。当たり前ですが、作家さんによって人生経験もそれによって得た糧も頭の中身も全然違います。そのすべてを文章に注ぎ込んでお話を作り上げるのが彼らの仕事です。入間人間さんが小説内の小説家に「全裸を他人に晒しているようなもの」というニュアンスのことを言わせてましたね。あれなんて話だっけ。

その熱量の総和が、私の経験知と形式知の総和を上回れば面白いのでしょうし、そうでなければ別の結論が出るのです。そしてこれは、読んでみないと分からないことでもあります。だから読まずにラノベを否定するのはダメだと思います。

 

なにか最近のおすすめとかございますかね。たまにはラノベアンテナを立て直してみるのもいいかもしれません。そんなことを思いました。

 

追伸:

ちなみに、作品の中身は忘れても、いまだにあとがきが忘れられない一冊がありましてね。のちに直木賞作家となった真藤順丈さんの東京ヴァンパイア・ファイナンス。賞金をもってすぐに消費者金融に行って返済した旨のことを書いてました。あの食い詰めっぷりは大変示唆に富んでおりましたので、サラリーマンをリタイヤしても作家だけは絶対やめようと思いました。